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前田遼一と大木武スタイルの親和性。
岐阜の練習で響く「遼一、Good!」
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph byFC GIFU
posted2019/01/24 10:30
J1で2度の得点王を獲得した前田遼一。37歳で迎えるシーズンは、岐阜の地でのチャレンジとなる。
前田は“大木キラー”だった。
もう10年以上前になるが、大木監督がヴァンフォーレ甲府の指揮を執っていた'06、'07年、磐田とはリーグ戦で4度対戦して1分3敗。前田遼一にはじつに4試合で4ゴールを許していた。そんな手痛い記憶が頭の片隅にあったのかもしれない。
のちに岡田武史監督率いる日本代表で、両者はコーチと選手の間柄になる。ケガやタイミングなどの兼ね合いで、南アフリカW杯は予備登録にとどまったのだが「実力的には間違いなく(最終23人の代表メンバーに)入ってくるFWだと俺は思っていた」と、前田に対する大木の高い評価は変わらなかった。
前田のほうも、大木が追求するサッカーに魅力を感じたという。岐阜への移籍を決めてからは、昨シーズンの試合のダイジェスト映像を観て、どういうプレーが自分にできるかをイメージした。
「縦に速い攻めと、後ろでつなぐときと、ふたつの側面があるように見えました。外には速い選手がいると思うので。僕は真ん中で、みんなと良い距離感でボールを動かして。最後に、また中央で勝負できたら良いと思いますね」
大木流の意図をいち早く察知。
「ロンド」と呼ばれる、決められたグリッドのなかで敵味方に分かれ、ボールを動かし奪い合うメニューひとつにしても、大木流のトレーニングではさまざまなルールが設定され、精度の高いキックやトラップ、素早い攻守の切り替えやポジショニングが要求される。そのため慣れない新加入の選手だと、要領をなかなか飲み込めず、足の停まる場面も少なくない。
が、前田はいち早くメニューの意図を察知すると、タイミング良く的確な位置に移動してはボールを引き出し、相手の間にパスを通してみせた。そのたびに「遼一、グッド!」という大木の声がグラウンドから聞こえてきた。
「最初に監督から『サッカーではテクニックと判断が大事だ』という話をされて。実際そういう要素が向上するような練習だと感じています。練習でも、たくさんの選手が近い距離で絡むので。これが試合でも出せたら、これまでとはすごく違った感覚が得られるかもしれません」