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藪恵壹が占う、阪神の2019年。
「守って優勝した歴史はない」
text by
藪恵壹Keiichi Yabu
photograph byKyodo News
posted2019/01/19 17:30
正捕手として2003年、2005年と2度のリーグ優勝を経験している矢野新監督はどんなスタイルの野球を繰り広げるのか。
阪神は守り勝った優勝がない。
ただ、じつは阪神の歴史では、守り勝って優勝したことはないんです。2位にはなれても、優勝したことはないんです。
私がプロに入りたての1990年代、当時の中村勝広監督も、守りの野球を目指していたのですが、完璧に守ろうとするには甲子園の外野は広すぎるんです。俊足強肩で知られた「亀山&新庄」のコンビがバリバリだった頃だって、2位がやっとだったんです。
優勝したシーズンというのは、そのリスクを、得点を奪うことで補ってきました。バース、掛布、岡田の1985年は言うまでもありませんが、2003年も、2005年も強力打線があったんです。
ところが今オフ、野手陣の大きな補強といえば、エンゼルスから獲得したジェフリー・マルテ内野手だけです。メジャー通算30本塁打とはいえ、昨シーズンは7本塁打。鳴り物入りで入団してきた昨季の助っ人ロサリオに比べれば、期待値からして差があります。
糸井&福留の両翼はどうなる?
守り勝つ野球で、広大な外野をカバーしようと思えば、今、打線の軸を担っている糸井嘉男、福留孝介の2人が両翼を守るということは考えにくい。
正直、昨季までは外野手のボールへの寄りの速さではカープに比べるとかなり劣っています。そうなると、2人のどちらかに代わって、主軸を打てる若手、中堅が求められますが、そういう選手はいるでしょうか?
高山俊、大山悠輔、陽川尚将、中谷将大、江越大賀ら候補はたくさんいるのですが、カープの鈴木誠也、ジャイアンツの岡本和真のように、真っ先に思い浮かぶ選手というのは残念ながらいないでしょう。つまり、守りに徹するにしても、攻めるにしても、現状の戦力を見渡すかぎりではジレンマがあるんです。
もちろん、2月のキャンプで補うことはできます。特に守備面は整備できると思いますが……。