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琴奨菊は相撲史に残る貴重な存在。
大関陥落した力士の苦闘の歴史。 

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西尾克洋

西尾克洋Katsuhiro Nishio

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photograph byKyodo News

posted2019/01/12 10:00

琴奨菊は相撲史に残る貴重な存在。大関陥落した力士の苦闘の歴史。<Number Web> photograph by Kyodo News

現在の琴奨菊は、相撲の歴史に残るほどに希少な存在である。羨ましいほどの力士人生だ。

30歳以上で陥落すると引退する力士が多い。

 最後に紹介するのが、30歳以上での陥落である。

 そもそも30歳以上で大関陥落が決定すると、多くの力士は引退する。そのため、これに該当する力士は霧島、千代大海、琴欧洲、琴奨菊の4名しか居ない。まずは陥落翌場所での大関復帰を目指し、関脇での10勝以上というモチベーションで土俵に上がるが、結果が出ずに引退するというパターンがある。これまでこれに当てはまらなかったのは霧島だけだった。

 つまりもうすぐ35歳の琴奨菊が、大関陥落から丸2年が経とうとする今も土俵に上がり続けていることは、実は稀なことなのである。

 しかし、琴奨菊は優勝経験もある。そして、大関としての在籍期間も長い。年寄株も取得している。大相撲で成し遂げたことも多い。いや、これだけの実績があればやり切ったと感じても不思議ではないだろう。

 事実、彼と同年代、そして少し年下で大関陥落した力士たちの中ですぐ辞めた者は多い。

 それでも琴奨菊は土俵に上がり続ける。しかも陥落後は全盛期より成績は落ちたものの、上位総当たりの地位に9場所も在籍しており、金星2つを獲得している。大関陥落後に金星を獲得した力士は、他には貴ノ浪と、若くして陥落が若かった出島・雅山しかいないのだ。

力士の寿命は大きく伸びている。

 一体何が、琴奨菊を動かすのだろうか。

 ただ、今は30歳を超えても白鵬や鶴竜のように全盛期の力を保てる力士もいれば、栃ノ心や嘉風のように更に強くなる力士すらいる時代なのだ。その気になって正しく努力を重ねれば、誰もが想像もつかないことが達成できるのが2019年の大相撲なのである。

 高齢なのは横綱大関だけではない。上位を見れば三役に玉鷲と妙義龍もいる。前頭上位には栃煌山と松鳳山もいる。一時期成績が落ちた力士が帰ってきているのだ。

 新世代の台頭と同時に、かつて上位で奮闘していた力士たちが全盛期と変わらぬ輝きを見せているのも、特筆すべきことだ。

【次ページ】 この年齢で同期3人が集まった奇跡。

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