野球のぼせもんBACK NUMBER
若き日の川崎宗則がした本物の練習。
ソフトバンクの若手に足りないもの。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2019/01/04 11:30
24歳の川崎宗則。出身地・鹿児島で自主トレ風景。複数のタイトルや賞を獲っていたが、練習の厳しさは変わらなかった。
若手を測るものさしは「川崎」。
また、川崎は試合の中でも常に向上心を持っていた。
ダグアウトから守備位置のショートまでは常にダッシュで向かい、そして全力疾走で戻ってきた。
「それを9イニング繰り返したら1日18本のダッシュをすることになる。シーズンが始まると試合前の練習では走る練習をする時間は限られてしまう。1年間すべての試合でそれを続けたら、どれくらいの数になるか。そうやって体のキレを作ったり、自分の体力を上げていったりしているんだ」
さも当然といった表情でそう話していた。
だから、筆者が若手選手と接するうえでの「ものさし」は川崎なのだ。
自主性のある選手が減っている。
以来、ホークスを番記者のように取材し続けて、2019年シーズンが18年目となるが、あれほど純粋に野球と向き合って、努力を継続し続ける若手との“再会”は果たせていない。
むしろ育成環境が充実するにつれて、自主性のある選手が徐々に減っている危機感すら覚えていた。
平成も終わろうとするこの世の中で、こんな精神論のような考え方は否定されてしまうかもしれない。だが、どれだけ科学技術が発達しようが、環境が改善されようが、道具が進化しようが、人の心が何よりも勝るのではないだろうか。
新年早々に説教じみたコラムにしてしまい恐縮する気持ちもある。しかし、2019年のホークスは大きな転換期を迎えることになる。オフにはたくさんのベテラン選手が去っていった。FA戦線では全敗。だが、それでも大型補強が行われる気配はない。
現有戦力にはこれ以上ない好機の1年である。ただ、チャンスは与えてもらうものではない。
奪うものだ。