月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
野球ファンは人事の話が大好きだ。
プロテクトと人的補償の報道祭り。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byKyodo News
posted2018/12/31 08:00
西武に移籍、入団記者会見で渡辺久信SD(右)と握手する内海哲也投手。
ネガティブなほどエンタメになる。
考えてみれば、FAもドラフトもトレードも監督もすべて「組織と人事」の話だ。皆、人事の話が大好きなのである。それにプラスして日本独特の「出ていく、出ていかない」「出す、出される」というウエットさが漂う限り、人的補償候補の記事は興味津々になるに決まってる。
プロテクト予想は日本独特のスパイスが加わり変化を遂げているが(これはドラフトもそうだった)、ネガティブなほどエンタメになる可能性もある。プロテクトから外されたとわかったら最初は同情がいくが、そのあとの活躍次第ではFA選手より人的補償選手のほうに注目がいく。
それは、ドラフトで希望球団に入れなかった選手が入団した球団で活躍して見返してみせるという、昔よくあった物語と同じ構図なのである。
ドラフトがオープンで公正になればなるほど理不尽は一掃される。いま、理不尽さを見せつけてくれるのは「プロテクト」である。理不尽からの逆転ドラマを見ることができるのもこの案件なのである。活字プロテクトの時代がやってきた。
内海の名前も外せないと挙がっていた。
ちなみに先ほどの記事は、番記者3人の座談会形式でお互いにプロテクト予想リストをつくって語り合っている。
「おいおい2人とも重信を外すのか! うわっ、2年目の谷岡や吉川大まで…。」
というくだりなどあるが、注目すべきはここ。
「全盛期を過ぎたとはいえ、功労者の阿部や内海ら生え抜きのベテラン陣は外せません。」
今となっては目を引く。そう、「内海」である。西武が人的補償で指名したのは内海だった。やはり番記者でも予想できなかったのか。サプライズは今やプロテクトにあり。「巨人、まさか」「西武はこの手できたか」という往年のドラフトはプロテクトにある。
記事の最後は、
「いずれにせよ、人的補償に選ばれることはファンにとってはショックでも、本人にとってはチャンス。」
と締めてあるから、こっちも未来を抱くことができる。