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W杯ベルギー戦、2点リード後の痛恨。
手倉森誠「いつもあった謙虚さが」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKazuo Fukuchi/JMPA
posted2018/12/30 07:00
ロストフに広がった勝者と敗者のコントラスト。日本サッカー史に残る激闘だった。
相手の力を利用するのが堅実。
――いけると思った、ということですね。
「選手たちはそんなことはない、と言うかもしれない。でも、深層心理はわからない。ポーランド戦の反省があったから、最後まで力を抜かずに戦い抜くことを目指したとも言えるけれど。アギーレさんが話していたんだよね」
――と、言いますと?
「2-0とリードした勢いのままに、かさにかかって攻める考え方はある。でも、力のある相手は怯みっぱなしにはならない。点を取ることよりも失点をしないことを重視して、しっかり守りながら時間を進めていく。そうすれば、相手は攻めているからスキが生まれやすい。相手の力を利用したサッカーが実は堅実なんだ、中堅国にはそういう試合運びが必要なんだと、アギーレさんが話していたことを思い出した」
――うーん……。
「ベルギーに勝ったら、準々決勝の相手はブラジルだった。彼らは90分で決着をつけていたから、ベルギーに勝っても延長戦まで戦ったら厳しくなる。そこまで考えて、西野さんは90分で仕留めにいったはず。だけど逆に仕留められた。FK、CKのチャンスがあったなかで、そのピンチをしのいだベルギーが仕留めた。
我々としては、あのCKのプランとオーガナイズが悔やまれる。あのレベルではあの時間帯にもスキを見せない緻密さがないと、ベスト16は越えられない。セットプレーの作業はやってきたんだ。ハリルさんがほとんどやらなかったこともあって、西野さんは時間を割いた。それでもセットプレーでやられた。それぐらい難しい。短い時間の準備だったからこそ……」
――細部を詰められなかった?
「詰め切れ、なかった。試合後に聞いたんだけど、ベルギーのロベルト・マルティネス監督はエバートンの監督当時に、CKのカウンターからの失点がリーグで一番多かったと。彼は教訓にしていたんだろう。GKがキャッチしたあとのあのアクションは、練習で刷り込まれていないとできない」