プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・小林誠司が生き残るために、
打撃だけではない重要な課題とは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/01/04 10:30
盗塁阻止率は2018年も.341で3年連続リーグトップを誇るが、打率はここ4年で一度も2割3分を超えていない。
盗塁を諦めさせる鉄砲肩。
ライバルの炭谷の今季の打撃成績は47試合で2割4分8厘。プロ13年間で2割5分を越えたのは2017年の2割5分1厘の1度だけしかない。
「個人的に彼に言ったのは(打率)2割5分」
炭谷の入団会見で原監督が掲げたバットへの要望は、実は小林とどっこいの数字だった。
それでもなお指揮官が炭谷獲得に動いた背景として大きかったのは、実は小林が自信を持っている守りに対する物足りなさだったのである。
もちろん持ち前の鉄砲肩は炭谷にも引けは取らない。
炭谷の盗塁阻止率3割2分7厘に対して小林は3年連続リーグトップの阻止率3割4分1厘。何より盗塁企図数が44と他のセ・リーグの捕手より圧倒的に少なく、まず相手走者に走ることを諦めさせている捕手であることが分かる。
この肩の強さは投手にとって、走者を出したときに打者に集中できるというメリットとなる。
菅野、山口が小林を推す理由。
2018年のシーズン中、大城卓三捕手が集中的に先発起用された時期があった。このとき、エースの菅野智之投手と山口俊投手が、わざわざ小林とのコンビを直訴している。もちろん理由は様々あった。
ただ、菅野や山口のような経験を持ち、ボールの威力で打者を抑え込む能力の高い投手にとっては、小林の肩には何物にも代えがたい価値があるということだ。
走者を出したとき、小林がマスクをかぶっていれば、相手はなかなか走れない。普通にクイックをすれば走ってこないし、もし走ってきても二塁で刺してくれる可能性が高い。それだけ打者を抑えることに集中できるということだ。
ところが大城のように少し肩に難のある捕手だと、それだけ走者に神経質にならざるを得ない。走らせないためにクイックに神経を使い、配球まで考慮しなければならない。
だとすれば、打てなくてもまず打者を抑え込むという投手の目的意識からみても、小林とコンビを組みたいと直訴するのは当然といえば当然の考えなのである。