ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
出会いと別れのストーブリーグ。
球団広報が見た去り際の美学。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/12/23 11:30
引退する大嶋。ソフトボール出身という異色の経歴で、2012年ドラフト7位で入団。通算15試合に出場して18打数3安打、打点1。
大嶋匠の目は真っ赤だった。
10月5日。ファイターズ鎌ケ谷スタジアムで、第1次の来季の契約に関する通告が行われた。
対象は2人。早稲田大ソフトボール部から挑戦した捕手だった大嶋匠さんが、そのうちの1人だった。来季の契約が結ばれないことを伝えられた直後、報道陣の前へと誘導をするのが、私の役割の1つだった。
勇翔寮内で、その時を待っていた。大嶋さんが、姿を現した。「お世話になりました」と両手を差し出され、握手を交わした。気丈に振る舞ってはいたが、目は真っ赤だった。
報道陣へ対応するため、寮の外へと出た。明るいキャラクターを最後まで貫き、最後の最後まで受け答えをしていた。時におどけ、笑顔を絶やさなかった。
ソフトボールからプロ野球。一時は周囲から奇異の視線も浴びただろうし、それを実感したこともあっただろう。7年間、やり遂げた。培った人間としての強さが、引き際にみなぎっていた。寂しかった一方で、任務を傍らに置いて、少し感動した。
新垣勇人が貫いたポリシー。
10月30日。同じファイターズ鎌ケ谷スタジアム。稀有なキャラクターで、圧倒的なムードメーカーだった投手の新垣勇人さんも似ていた。
サバサバとはしていたが、やはり現実に直面したショックは、その姿や雰囲気から感じた。同じように、報道陣と向き合うとユーモア満点に、取材を終えた。恨み節も、後悔のようなものも微塵も見せなかった。ポリシーを貫き通す、信念を垣間見た。
11月24日、札幌ドームでの「ファンフェスティバル2018」。飛び入りした新垣さんの圧倒的なパフォーマンスに、ハートを撃ち抜かれた。
仕事で直面した、立ち居振る舞い。最終的に現役引退の決断をした若い2人から「引き際の美学」が実在することを知った。