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平尾誠二との約束、日本一で結実。
神戸製鋼を変えたカーターと総監督。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byKiichi Matsumoto
posted2018/12/19 08:00
2年前に亡くなった“日本ラグビーのレジェンド”平尾誠二氏の遺影を手にするゲームキャプテンの橋本大輝。
「特別なことは何もしない」
決勝を控えた週には、決勝を初めて戦う選手からカーターに「決勝で勝つための特別な方法は何かあるの?」という質問があったという。カーターの答えはシンプルだった。
「そんなものはない。今までやってきたハードワークをそのまま出すだけだよ」
魔法などない。当たり前のことを当たり前にやりぬくだけ。
その言葉は、カーターのプレーにも通じる。
「特別なことは何もしないね」
世界一の選手が来日したと聞いてラグビー観戦に繰り出した人から今季、何度もそんな言葉を聞いた。
カーターは大向こうを唸らせるようなトリッキーなプレーや、相手を吹っ飛ばすような豪快なプレーや、うわ! と叫ぶようなステップを見せるわけではない。基本通りのプレーを忠実に遂行する。
ただしその精度が恐ろしく高いのだ。それが、チームに安心と安定と勇気を与える。
個人技に頼りすぎから一変。
「個々のポテンシャルはすごいけど、まとまりがね……」
ここ数年、神戸製鋼に寄せられていた評価だ。
個々には能力の高い選手が揃っていながら、自分で何とかしようとするあまりなのだろう、強引なプレーに走り、ボールを失う。どこのチームもマネできないような高いスキル、個人技のスーパートライを奪いながら、何でもないプレーであっけなくトライを失う場面も散見された。
それがカーターの加入で一変した。
絶対に間違いを犯さない司令塔がチームの真ん中にいる。だから、周りの選手は自分で全部を何とかしようと考える必要がない。自分の仕事に専念すればいい。