“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
迷える巨人に今一番必要なのは、
FA戦略の休止ではないだろうか……。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2018/12/10 10:30
入団記者会見で背番号27を披露する炭谷銀仁朗捕手と原辰徳監督。
主力流出の後には若手が伸びる!
来季の広島外野陣は、センター、ライトを野間峻祥、鈴木誠也で固め、レフトをバティスタ、西川龍馬、松山竜平で競わせるだろうし、次代の正捕手争いから外れた坂倉将吾、中村奨成を外野に回す中長期プランだってできそうだ。
広島の例を見るまでもなく、主力の流出により新たなプランがそこから生まれるということがよくわかるのではないだろうか。
と同時に、他球団の主力獲得は自軍の若手の出場機会を奪うということもよくわかる。
制度導入の1993年以降、巨人はFA権を行使した24人を獲得しているが、成功しているとはっきり言えるのは小笠原道大('07~'13年)だけではないだろうか。
それでも巨人はFA戦略を止めようとしない。選手からすればベテランになってから高い契約金と年俸で獲ってくれるありがたい球団だが、若手の生え抜きにはキツイ球団になってしまっている。
栄光の直後に暗黒時代が。
この暮れに、『ドラフト未来予想図』(文藝春秋刊)という本を出版したのだが、各球団の黄金時代と暗黒時代を対比させようと調べたら、その両者の間には1~4年間の猶予しかなかった。
近年では中日が'10年、'11年と連覇した後で、6年連続Bクラスの始まった年が'13年なので、猶予期間はたった1年しか無い例となった。
巨人のBクラスは最長で2年なので暗黒時代はまだ訪れていない珍しい球団だが、かつての凄みが失われていることも、また同時に明らかである。
ドラフト下手の球団をAクラスになんとか留める戦略……「FA戦略」の効用はそれくらいしか思い当たらない。今後、鹿取義隆GMから球団の舵取りを託された新体制は、明確な戦略を打ち出せるのだろうか――。
私は、巨人はしばらくFAを封印したほうがいいと思っている。それがとりあえず今の巨人の最高の戦略である。
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