“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
迷える巨人に今一番必要なのは、
FA戦略の休止ではないだろうか……。
posted2018/12/10 10:30
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Kyodo News
巨人が積極的な補強を進めているが、私は評価していない。
FA権を行使した選手は炭谷銀仁朗(捕手・西武)、丸佳浩(外野手・広島)、それ以外では中島宏之(内野手・オリックス)、岩隈久志(投手・マリナーズ)、ビヤヌエバ(内野手・パドレス)を獲得している。
炭谷は通算653安打、打率.212、ゴールデングラブ賞2回という完全なディフェンス型キャッチャーで年齢は来季で32歳を迎える。
巨人には小林誠司(来季30歳)、大城卓三(同26歳)、宇佐見真吾(同26歳)、岸田行倫(同23歳)という一軍クラスのキャッチャーが複数いて、岸田以外は若手とは言えないので、来季きちんと起用しなければ“旬”を逃すことになるのではないか。そういう状況で炭谷はFA権を行使して移籍してくるのである。
小林は2013年のドラフトで石川歩(ロッテ)の外れ1位で入団して以来、3年目の'16年に100試合以上マスクを被り、'17年春に行われたWBCでは全試合にスタメン出場し、持ち味のディフェンス以外でも打率.450(安打9)、本塁打1、打点6を記録している。
この小林のことを考えるとき私はいつも阿部慎之助の若い頃を思い出す。
長嶋が阿部を育てた時は……。
阿部は新人年の'01年だと.225という低打率ながら127試合に出場していた。
チーム成績を振り返れば優勝したヤクルトとはわずか3ゲーム差の2位である。チーム防御率は前年の3.34(リーグ1位)から4.45(リーグ6位)まで落ちた。前年101試合に出場しているベテランキャッチャーの村田真一をレギュラーで起用すればヤクルトとの差はひっくり返ったかもしれないが、この年限りで監督の座を原辰徳に譲ることを決めていた長嶋茂雄監督は“10年の計”で阿部をレギュラーキャッチャーとして起用し続けた。
その成果は原体制以降の17年間('02~'18年)でリーグ優勝7回、日本一3回という成績にしっかり反映されている。こういう起用法を高橋由伸前監督やフロントは考えなかったのだろうか。