話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
ギリギリでJ1に生き残った名古屋。
52得点59失点をどう考えるか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/12/03 12:00
残留決定の報を聞いて、涙を流していたジョー。最後の最後まで諦めない姿勢が、残留を引き寄せたのだ。
選手の動揺が止まらない……。
地上戦も裏を狙う動きがなく、足元へのパスだけで相手に容易に狙われてボールを奪われた。その状況をベンチの前田直輝は地団駄を踏んで見ていたという。
名古屋は後手を踏み、先制点を失い、PKで2点目を奪われた。
「2点目を取られた時、さすがにガクッという感じになった」
丸山祐市は、選手の動揺を肌で感じていたという。
風間監督「自分たちの特長はなんだ!」
前半終了後、ロッカーに引き上げてくる両チームの選手の表情はまったく対照的だった。手応えを感じ自信満ちた湘南と、落胆する名古屋。
この時、スタジアムにいる誰もが2年前の2016年11月3日、湘南に3-1で敗れ、チーム初のJ2降格を味わったことを思い出しただろう。あの時と同じように、この日も「また湘南に」という空気が流れていた。
業を煮やした風間八宏監督はロッカーで発破をかけた。
「自分たちの特長はなんだ!」
その声に、多くの選手が「ボールを持って前に進むことです」と答えた。
玉田は「今、やるしかないだろう」と、声を上げたという。
チーム全員ですべきことを確認、さらに前田を投入し、4バックに変えて後半から巻き返しを図った。「後半から雰囲気が変わった」と玉田の言葉通り、名古屋は前田の仕掛けるプレーに引っ張られるように息を吹き返し、2つのPKを奪い、ジョーが決めて同点に追いついた。
前半とは別のチームのような変化を遂げたのだ。