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東京Vとロティーナの窮地を救った、
井上潮音は勇敢で巧くてクレバー。
posted2018/12/01 17:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
Getty Images
11月25日、J1参入プレーオフ1回戦、東京ヴェルディ(6位)は大宮アルディージャ(5位)のホーム、NACK5スタジアム大宮に乗り込んだ。
年間順位の上位にアドバンテージが与えられるレギュレーション。このゲームの引き分けは、大宮の勝利を意味していた。
開始から東京Vが優勢に試合を進める。ところが59分、チームのへそに位置し、攻守の要となる内田達也が2枚目の警告を受け、退場となるアクシデント。数的不利となり、にわかに暗雲が漂う。
ロティーナ監督は中盤に厚みを持たせる布陣に変更し、キーマンの抜けた穴をカバーしようと試みる。そこで、内田の担っていた仕事の大部分を割り振ったのが井上潮音だった。
見かけほどヤワでない。
プロ3年目の21歳。日本サッカーの総力を挙げて強化が進められる、2020年の東京五輪世代のひとりである。かねてより、ロティーナ監督は井上のプレーを高く評価し、チームづくりの骨子としてきた。
細かくポジションを変えながらボールを自在に動かし、シンプルなプレーの連続でゲームの流れをつくり出す才人だ。167cmと小柄で、運動能力そのものは特筆すべき事柄はない。ただし、鍛え抜かれた体幹と同様に、見かけほどヤワではないのがこの選手の面白さと言える。
昨年のプレーオフ、東京Vはアビスパ福岡と対戦し、0-1で敗れた。僅差ながら、内容的にはまるで歯が立たなかった印象の敗戦である。井上に出場機会はなく、ベンチに座ったままそれを見届けるしかなかった。
大宮戦を目前に控え、井上は次のように語っている。
「前回のプレーオフでは、まったくチームの役に立てなかった。ただただ、悔しかったです。また、あのときはチームとしても初のプレーオフ出場をつかみ取って大喜びし、そこから先のJ1までは現実味を持って捉えられていなかったように感じます。その点、今年は違いますよ。誰ひとりとして現状に満足してない。自分たちはもっとやれると意気込んでいます」