話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
ギリギリでJ1に生き残った名古屋。
52得点59失点をどう考えるか。
posted2018/12/03 12:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
2-2で試合が終わった後、スタジアムは凪ぎのようにシーンとなった。
その時点で「プレーオフを戦わなければならない」と玉田圭司は覚悟を決めたという。
ドローでJ1残留を決定づけた湘南ベルマーレのサポーターの歓喜の声が響き渡る。
名古屋グランパスの選手ががっくりと肩を落としている中、名古屋ポーターの一部がザワザワし始めた。「もしかして?」という希望の空気が広がり、やがてあちこちで歓声が上がる。すると、スタッフからベンチにジュビロ磐田が川崎フロンターレに負けたというニュースが届き、選手が喜びを爆発させた。
サブメンバーやメンバー外の選手も全員ピッチに集まり、喜び合う。ジョーは目に涙をためて、ガブリエル・シャビエル、エドゥアルド・ネットと抱き合った。
「ホッとしました」
玉田は、表情を崩して、そう言った。名古屋は最終戦を終えた後、奇跡の逆転J1残留を決めたのである。
消えた“名古屋スタイル”。
前半は、名古屋本来のスタイルがまったく消えていた。
早めのクロスでジョーを狙い、相手のラインを下げてセカンドボールを狙うという攻撃は、攻撃のひとつのオプションとしてはプラスだ。ただ、それは持ち味である地上戦が主にあって、目先や流れを変えるのに効果的ということだ。
ところがこの日は、ジョーのサポートが薄い中、ただボールを放り込むだけ。勝ち点3を取りたいという気持ちが先立ち、さらに湘南の激しいプレスを避けての手段だったのだろうが……これが完全に裏目に出た。