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コラボしたピアニスト清塚信也が称賛。
羽生結弦の才能とカッコいい生き方。
text by
熊谷未希(Number編集部)Miki Kumagai
photograph byYukihito Taguchi
posted2018/11/27 15:30
アイスショー「ファンタジー・オン・アイス2018」で『春よ、来い』を演じる羽生結弦。
「どういうふうにカッコよく生きていくか」
リハーサルが始まる前は、音楽が演技に合わせて追いかけていくしかないコラボレーションになる可能性を心配していたが、「羽生選手がすごいのは、僕に合わせて弾いてほしいと言ってこなかったこと」。
ピアニストが一方的に合わせるのでは、CDをかけての演技と変わらないものになってしまう。羽生は、リスクを負ってでも、ライブに価値を見出していたということだ。
実際に、ライブでしか表現しえない演技だったからこそ、「今日はこうだった。こう感じた」という様々な感想がネット上に溢れ、会場によって、観る人によって異なる感動を引き起こしたのだろう。
「何かを犠牲にしてでも新たな価値観をもてるセンスというのはやっぱり、普段の生き方ですよね。どういうふうにカッコよく生きていくか、で決まると思います。それに、羽生選手は日頃からすごく色んなことに本格的に興味を持っていらっしゃる。音楽のことも楽器のことも、そのときの付け焼刃じゃなくて、本当に普段から興味を持っていらっしゃるからこそ、成立したことだと思っています」
「やりたいけど、あんまり簡単には」
いかに羽生選手がすごいのか、音楽家の立場から熱く語ってくれたが、逆も然りで、クラシック・ピアニストの枠を超えて、新たな挑戦を続けている清塚さんが相手だったからこその幸福なコラボレーションだったのではないだろうか。
あの奇跡のようなコラボレーションをもう一度、と思っている人はたくさんいるはずで、その可能性を問うと、少し間をおいて、真剣な表情で答えてくれた。
「もちろんまたやりたいけど、あんまり簡単には手を出したくないですね。僕にとっても、今回の出来に関しては、すごく満足していますし、羽生選手との思い出を含め、神聖なものという感覚があるので。これ面白そうじゃない? ぐらいの気持ちでは、やりたくないかな」