濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
立ち技イベント「Krush」10周年。
記念大会にも表れた“イズム”とは?
posted2018/11/27 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takao Masaki
立ち技格闘技イベントKrushが、スタートから10周年を迎えた。
記念大会は11月21日に後楽園ホールで開催。メインイベンターは2008年の第1回大会にも出場した山本真弘が務め、20歳の里見柚己と闘っている。
かつて60kg最強とも言われた山本も、今は35歳。連敗中で、タイトルホルダーでもない。この大会では、近年のKrushでは珍しくタイトルマッチが1試合も組まれていなかった。
セミファイナルの牧平圭太vs.渡邊俊樹は、元ウェルター級王者とキャリア6戦の選手の対戦だ。
牧平がブランク明けの復帰戦でなければ組まれなかった、いわば“チャレンジマッチ”である。加えて渡邊の師匠が元Krushファイターの山本優弥であり、牧平とタイトルマッチで闘ったというストーリーもあった。しかも優弥は、地元・広島での牧平の先輩でもある。
「牧平くんの相手がなかなか決まらない中で、渡邊くんを抜擢させてもらいました。といっても渡邊くん本人のスイッチが入らなかったら組めなかった。彼のキャリアにとって、大きなギャンブルですから」
そう振り返ったのは、Krushと新生K-1、KHAOSと3つのイベントをプロデュースする宮田充だ。宮田によれば、今大会の対戦カードは難航。11月3日、12月8日とK-1の大会に挟まれた日程の影響もあるだろう。曰く「思い通りにいく興行なんて、めったにあるもんじゃないですから」。
Krushの歴史にアクシデントはつきもの。
Krushが立ち上げられたのは、宮田が全日本キックボクシング連盟の広報兼マッチメイカーだった時代である。
最初はキック団体の中の一企画という位置づけだったのだ。それでもK-1ルールを公式に採用し、各団体から強豪が参戦したインパクトは大きかった。
独立したイベントとなったのは、代表者の不祥事による全日本キックの運営ストップが原因だった。全日本キックと同様の「加盟ジム制の団体」か、イベントとしてのKrushに舵を切るか。自立するにあたって宮田が選んだのは後者だった。