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東京Vにあり大宮になかったもの。
昇格プレーオフは一発勝負じゃない。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/11/26 12:30
大宮アルディージャのJ1復帰はならなかった。石井監督の退任も濃厚で、新たなフェーズを迎えそうだ。
前半は0-0で乗り切ったが……。
前半が30分を過ぎたところで、石井監督は選手の立ち位置を変える。大前と富山の2トップとし、マテウスを2列目左サイドへ下げ、茨田を右サイドへスライドさせる。
「前半の入りは想定どおりというか、相手が勢いを持って入ってくるのは分かっていた」と三門は話すが、現状維持では決壊が近づくばかりである。手当てが必要だった。
前半は0-0で乗り切った。やり慣れていない形でも失点をしなかったのだからOK、と考えることはできただろう。それにしても、度が過ぎていた。
「自分たちがボールを保持する時間が少なくなるのは分かっていたけど、前半から相手に握られ過ぎていたし、自分たちが持つ時間が少な過ぎた。ボールの失い方もあまりに早過ぎたし、失う回数も多かった」と大前は話す。攻撃のリズムをまったくと言っていいほどつかめないまま、大宮はハーフタイムを迎えることになった。
大事な試合をことごとく落としてきた。
0-0のまま推移していくゲームに、分岐点が訪れたのは59分だ。東京Vが退場者を出して10人になるのである。
引き分けでもいい状況で、大宮は数的優位に立った。ようやくボールを握れるようになるはずが、戦況は好転しなかったのである。71分に直接FKから失点したのは、同じような位置でそれまでも反則を冒しており、10人の相手がリスタートに活路を見出すことを考えれば、注意力が欠けていたとの指摘を避けられない。
振り返れば今シーズンの大宮は、勝負強さを身に付けることができなかった。J2を制した松本山雅FCとのホームゲームでは、前半のうちに相手が10人となり、先制点を奪ったにもかかわらず逆転負けを喫した。リーグ3位の横浜FCとのアウェイゲームでも、1点のリードを守りきれずに勝点3を取り逃した。
「ここで勝てばという試合を、ことごとく落としてきた」と三門が振り返っていたように、5位でプレーオフへ辿り着いたのはライバルの躓きに助けられたところがあった。