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東京Vにあり大宮になかったもの。
昇格プレーオフは一発勝負じゃない。
posted2018/11/26 12:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
J.LEAGUE
キックオフの笛が鳴る前に、勝負は決していたのかもしれない。
11月25日に行われたJ1参入プレーオフ1回戦で、大宮アルディージャは東京ヴェルディに0-1で敗れた。
アドバンテージを持っていたのは大宮である。リーグ戦の順位が上位のクラブにホームゲームを戦う権利があり、5位の大宮が6位の東京VをNACK5スタジアム大宮に迎えたのだった。
一発勝負のトーナメントに延長戦はない。引き分けならリーグ戦の順位が上位のクラブが2回戦に進出する。ここでも大宮はアドバンテージを握っていた。
大宮の石井正忠監督は、守備に重点を置いた。ストライカーでありながらディフェンスでもハードワークをする富山貴光を、4-4-2の2列目右サイドで起用したのである。
退場者を出して数的不利に立たされた前週のリーグ最終節で、2トップの一角だった富山が応急処置として2列目の右サイドに下がった。そこから1点を奪って勝利をつかみ、プレーオフ圏外の7位から5位へ浮上している。
大前元紀と富山が2トップを組み、ブラジル人アタッカーのマテウスが2列目に入る組み合わせを多く採用してきたなかで、石井監督はマテウスと富山のポジションを入れ替えたのだった。シンプルに表現すれば、不慣れな形である。
東京Vに押し込まれる負の連鎖。
指揮官の狙いは空転する。3-4-2-1のシステムでサイドから強烈な圧力をかけてくる東京Vに、キックオフ直後から押し込まれてしまうのだ。
富山は守備にかかりきりだった。ダブルボランチの三門雄大と大山啓輔も、左サイドハーフの茨田陽生も、自陣に押し止められる。
負の連鎖が襲いかかってきた。
攻撃が大前とマテウスだけの関係になり、あっさりとボールを失ってしまう。攻撃から守備への切り替わりでボールを奪えない。前線からのプレスがハマらない。相手の攻撃を跳ね返しても、セカンドボールを拾えない。自分たちの時間帯を持つことができない。ひたすらに守るしかない──。