球体とリズムBACK NUMBER
ベルマーレJ1残留を託される2人、
菊地俊介と石川俊輝の以心伝心。
posted2018/11/27 11:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
湘南ベルマーレの貴重な決勝点は、埼玉出身の同い年のふたりが交わしたアイコンタクトから生まれた。
先週末の浦和レッズとのJ1第33節、梅崎司が古巣から「スーパー」(チョウ・キジェ監督)な先制点を奪った前半を経て、56分に石川俊輝が中盤からボールを持ち運ぶ。視界の遠くにいた菊地俊介と「目が合って」、柔らかい浮き玉のパスを通すと、ボックス内で受けた菊地が「ファーストタッチで勝負」を決めて、右足で鋭いシュートをねじ込んだ。
その後に1点を返されたが、最後までこの2点目を守りきり、湘南は残留に向けてどうしても欲しかった勝ち点3を手にした。
神奈川のクラブを支える埼玉生まれのふたりの27歳。大宮アルディージャの下部組織経験者、大卒5年目、MF、汎用性の高さなど、出身地と年齢以外にも、石川と菊地の共通項は多い。優しい目許もどことなく似ている気がするし、名前の漢字「俊」も一緒だ。
攻撃面で飛躍した菊地。
背番号2をまとう菊地俊介は、180cmのたくましい身体とリーダーシップを兼備する副キャプテンのひとり。ただし見た目によらず、「ナイーブなところがある」(チョウ監督)らしく、この重要な一戦の前には指揮官から個人的に話をされたという。
監督は「(菊地は)最近、怪我が多いので、マイナス要素がある時にどう振る舞うか。そんな話をしました。今日はけっこうミスも多かったけど、折れずに徹底したことがあのゴールに繋がったのかな」と明かす。
一方の本人は「(監督と話した内容は)ちょっと言えないです」とはぐらかしつつ、「今週は相当活を入れられて、激しい練習をしてきたので、それが結果につながってよかった」と振り返った。
湘南はルヴァンカップで初優勝を遂げてから、リーグ戦の3試合でゴールと白星に見放されていた。客観的に見て明確なゴールの型はなく、チーム得点ランキングの首位には中盤の菊地が立っていた(浦和戦前の時点で5ゴール)。「元々はボランチ」(チョウ監督)ながら、ここ1、2年で攻撃面を飛躍的に伸ばす菊地は責任を感じていたようで、「僕とウメさん(梅崎)が取れてよかった」と安堵とも取れる言葉を発した。