【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
メイウェザーが教えてくれたこと。
スポーツでも契約書は凄く大事!
text by
池田純Jun Ikeda
photograph byGetty Images
posted2018/11/11 11:00
会見では終始にこやかだったメイウェザーだが、自身のインスタグラムで、対戦に同意したことはないと主張。
契約書があれば主張して戦える。
正式契約前のオファー段階にも関わらず、誰かのリークによって報道が先んじてしまうことが、スポーツ界にはあります。それをきっかけに各所から横槍が入り、契約へと話が進まず、挙げ句の果てに破談になることも。
さらに逸失利益やその間に断ったものごとなどにより損害補償が発生する、というのも往々にしてなくはない話。私自身もそうしたことに巻き込まれることがあり、スポーツ界は報道が先行すると揉めるな、と感じたことがありました。しかし今回のケースではメイウェザーも会見に同席していたので、ある種の同罪と言えるでしょう。
契約書があるからこそ、契約違反だと主張して戦えます。ないしは契約前段階のオファーや返答など、当事者間で交わされた書類がどういった形で残っているのかで争うことになります。グリエル選手も2年目のシーズンは残念ながら来日に至りませんでしたが、そこは契約書に基づいて違反内容を主張できるわけです。今回の件は果たしてそういったエビデンスや契約書が残っているのかいないのか。
ビジネスの世界にはレター・オブ・インテントというものがあります。契約を結ぶ方向であることを約束する「意向確認書」のようなもので、企業のM&Aや業務提携などはこれを経たからといって公式発表されるわけではありません。もし今回のマッチメークに際してこれが交わされていたのだとしたら、あの発表は「マッチメークできるかもしれません会見」だったというわけです。
スポーツビジネスが盛り上がる中で外国人選手や過去に経験のない国などとの契約は必ず発生してくるもの。今回の件を見て、ヒヤッとしたスポーツ関係者もいるのではないでしょうか。これをきっかけに、スポーツビジネスにおける契約書やエビデンスの重要性を見直すべきでしょう。