【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
メイウェザーが教えてくれたこと。
スポーツでも契約書は凄く大事!
posted2018/11/11 11:00
text by
池田純Jun Ikeda
photograph by
Getty Images
11月5日、那須川天心vs.フロイド・メイウェザーの一戦が大晦日に行なわれると発表されました。50戦無敗のボクシング元世界王者と、32戦無敗のキックボクシング界の「神童」による異種格闘技戦で、想像もできないようなビッグマッチとあって、スポーツ新聞も一面で扱うなど人々の関心の高さがうかがえました。
私はアメリカでメイウェザーとUFC2階級王者コナー・マクレガーの一戦の会見を中継で見ましたが、あの時は互いにバチバチ挑発しあっていました。でもこの間の会見は、終始にこやかな表情で、那須川選手の挑発にも余裕の構え。まるで日本に旅行にでも来たのかというくらいのものでした。
なんかおかしいな、と思っていたところ、発表からわずか3日で案の定ひっくり返されてしまいました。
グリエルを連れてきた時……。
そもそも契約書は存在したのでしょうか。メイウェザーは「マネー」と呼ばれるほど、お金にうるさい“ヒール”だというのは周知の事実です。
しかも手堅く勝ちにいく選手で、観客が激しい打ち合いを期待していても、スピードを武器に間合いをしっかり測って、12Rフルに戦ってでも、きっちり判定で勝つような試合をする。そんなしたたかな選手が、ルール未定の異種格闘技戦にすんなり出てくるとは思えませんでした。
「本人とは話をしています」という興行主側の、契約に基づく対応議論中というものではないように感じる、絶賛口頭議論進行中のようなコメントをニュースでみました。日本なら口頭契約という概念もありますが、世界では通用しないでしょう。ベイスターズにユリエスキ・グリエル選手を連れてきたときも、キューバに何度も足を運び、契約条項を何度も検討してようやくサインに至り、公式発表に至りました。
スポーツ新聞などで「契約合意か」とスクープとして書かれることはありますが、公式発表するのはあくまでも本人同士が契約書にサインしてから。
ルールはどうするのか、キックは認めるのか、グローブは何オンスにするのか。ファーストクラスかプライベートジェットか。さらには来日中の食費や移動手段はどうするのか、家族の分のチケットや宿はどうするのか……ありとあらゆることを契約条項に入れて、全て同意してからやっと契約に至るわけです。