ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
メイウェザー・パッキャオ時代の終焉。
祭りのあとに響く次世代の足音。
posted2015/05/08 11:20
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
AFLO
祭りは終わった─―。
5月2日(日本時間3日)、米ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで行われたフロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオの一戦は、メイウェザーの判定勝利という結果で幕を閉じた。
5年という歳月をかけ、難産の末に実現したビッグファイト。双方合わせて300億円を超えると言われる史上最高のファイトマネー。ファンの手にはわずかしか渡らなかった高額なプラチナチケット。何もかもがけた外れだった巨大な祭りの終焉は、メイウェザーとパッキャオという対照的なヒーローが君臨した時代の終わりを静かに告げた。
メイウェザーとパッキャオ。ライバルとはいつの時代も互いを輝かせる。ボクシング一家に生まれ育ったメイウェザーは、卓越したスピードと防御勘で決してすきを見せることなく無敗街道をひた走った。
たびたび「試合がつまらない」と揶揄された“マネー”に対し、フィリピンの貧農で生まれ育った“パックマン”は常にエキサイティングなファイトでスターの座を手に入れた。メイウェザーの試合を見ればパッキャオのワイルドな魅力が浮き彫りになり、パッキャオのスタイルを目にすれば、メイウェザーの完璧さがさらに際立った。
期待にたがわぬ“何も起こらない”試合。
そういう意味で期待にたがわぬ試合だったと思う。パッキャオはどこまでもパッキャオで、メイウェザーはどこまでもメイウェザーだった。パッキャオは3回に左をヒットし、終わってみればこの試合唯一のチャンスを作ったが、ここからたたみかけることはできなかった。メイウェザーはどこまでも細心で、手数はあまり出さず、最後までパッキャオのアタックを封じた。
過去の名勝負と言われる試合とはひと味違う趣だった。
何も起こらなかった。メイウェザーが何も起こさせなかった。だれに何と言われようが己のスタイルを崩さない。そこにはメイウェザーのゆるぎない意志があった。
「メイウェザーは集中力が違う」
WBA世界スーパーフェザー級王者、内山高志の言葉が最小限にして的確にこの試合を表現していると思う。