“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
それでもA代表に必要な杉岡大暉。
湘南で磨かれる驚異の攻撃力とは。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/11/10 08:00
その頑強な身体とテクニックで、恐るべき推進力を誇る杉岡大暉のドリブル。
強いドリブル、そして新しい武器。
「決勝よりも今の方がコンディションは上がっていると思います」
話をJ1第31節の清水戦に戻そう。この試合、0-0で迎えた61分に投入された彼は、投入直後の63分にセンターライン付近でルーズボールを受けると、寄せて来たDFを引きずるようにドリブルで左サイド深くまで運んだ。
さらに一度預けたFW山口和樹からリターンを受けると、対峙したDF2人の間を強引に仕掛けた。ここはDFに阻まれたが、この2度の仕掛けは彼のメンタル的な安定感を示していた。さらにその1分後の64分、左サイドに流れたボールを、DFを背中でブロックしながら受けると、身体を預けながら縦に仕掛け、抜き切らない状況で左足クロスを上げた。
そしてこの2つのプレーを皮切りに、冒頭で触れた3本のアーリークロスが生まれた。
アーリークロスに迷いが無くなった。
68分、MF金子大毅のサイドチェンジのパスを左で受けると、左足でツータッチ後にDFが食いついてくる前に素早く左足のアーリークロス。これは清水の高さに弾かれた。
76分、左サイドで金子からのパスを、加速しながら左足でトラップすると、右足でコントロールしてから左足のアーリークロス。ライナー性の鋭いボールだったが、これは反応しきれる選手がいなかった。
さらに80分、左ワイドに開いた杉岡に三度、中央の金子からパスが届く。左足でトラップをすると、対峙したDFに仕掛けに行くと見せかけて、素早く振り抜く形でグラウンダーの左足クロス。猛ダッシュで飛び込んで来た味方のシュートを引き出すも、シュートブロックにあった。そのこぼれ球に杉岡が反応して左足シュートするも、これもDFの身体を張ったブロックに阻まれてしまった。
いずれもゴールに直結することは無かったが、この3本のアーリークロスはこれまでの杉岡のプレーとは明らかに違っていた。
彼のこれまでのクロスは、「上げなきゃいけない」という義務感に駆られたクロスのように見えた。だが、この3本のアーリークロスには迷いが一切なかったのだ。さらに言うと、クロスが合わなかった後の彼の表情も、一切曇ることはなかった。