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日本がエディーとの対戦を前に、
オールブラックスから学んだ教訓。
posted2018/11/07 07:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Itaru Chiba
試合前、オールブラックスのバックスリー(両ウィングとフルバック)はハイパントの処理の練習を念入りに行なっていた。
日本がキックを織り込んでくるのは想定済みで、それに対する丹念な処理、そこを起点としたカウンターアタックのシナリオを書いているのは明白だった。
惚れ惚れしたのは、練習で繰り出されるハイパントの美しさだった。
滞空時間が長く、距離もドンピシャ。万事に曖昧さはない。
ハイパントの軌跡を目で追っていると、2011年のラグビー・ワールドカップ・ニュージーランド大会の取材に行ったときのことを思い出した。
登校時にラグビーボールをバウンドさせながら歩いている小学生や、放課後、キックの高さを競っている子どもたち。ボールが体の一部になるよう、幼いころから楕円球と戯れているのだ。
ソフトだったハイパント。
11月3日、日本vs.ニュージーランド。
14時45分キックオフ。
試合が始まってみると、日本のハイパントはソフトだった。滞空時間、蹴ったエリアも曖昧だった。
目的意識を欠いたボールを受けるたび、オールブラックスの選手たちは嬉々として走り出し、あるいはショートパントやゴロパントを蹴っては、そのボールを自分の胸にすっぽりと収めて、また自由自在に走り出すのだった。
まるで、ジャパンのキックは相手に餌を与えているようだった。
ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは、「特に後半は不必要なキックが多かった。もっと、ポゼッションを高めていれば、違った展開になっていただろう」と語った。