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「スクール☆ウォーズ」が再び蘇る!
『伏見工業伝説』、小畑親子の夢。

posted2018/11/08 17:15

 
「スクール☆ウォーズ」が再び蘇る!『伏見工業伝説』、小畑親子の夢。<Number Web> photograph by AFLO

前人未踏の大学選手権10連覇を狙う帝京大学の不動のスクラムハーフとして活躍する小畑健太郎。

text by

益子浩一

益子浩一Koichi Mashiko

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AFLO

 JR三ノ宮駅のホームで、大阪行きの最終電車を待っている時だった。周囲の雑音に割り込むように、携帯電話が鳴った。その日(10月5日)は、『伏見工業伝説』が発売になった日でもあった。

「夜分にすいません。小畑です」

 電話口の声は、震えていた。だいぶ、酒が入っていたのかも知れない。泣いているようにも聞こえた。

「これが本当のスクールウォーズですわ。これこそが、俺たちがやってきたことなんです。思い出すと、涙が出てきてね。何回も読み返しました。自分がやってきたことを、同じ道を、今、せがれがたどってくれとる。俺たちでは決して成し遂げることができんかった夢を、40年が過ぎて、せがれが叶えてくれようとしとるんです。こんな幸せなことって、ありますか? 天国の嫁も、きっと、喜んでくれていますわ」

 1980年代に大ヒットしたドラマ「スクール☆ウォーズ」の冒頭で、不良生徒が、校舎の廊下をバイクで走らせる場面がある。電話の向こうにいる小畑道弘は、そのモデルとして描かれた人物だった。

 1975年5月。その題材となった京都の伏見工業は、0-112で強豪の花園高校に大敗する。当時のキャプテンだった小畑は、「悔しい! 俺は勝ちたい」と泣き叫んだ。

 そして、屈辱を忘れないようにと、伏見工業に就任したばかりだったラグビー元日本代表の山口良治監督は部員ひとりひとりを殴りつけた。ドラマで描かれたあまりにも有名なシーン。それから40年以上の月日が流れた。

 小畑は還暦を迎える年齢になり、その長男は父の背中を追い続けている。

小2で見た「スクール☆ウォーズ」。

 ラグビー・トップリーグの神戸製鋼コベルコスティーラーズが、11月1日に来季の新加入選手8人を発表した。そこに、帝京大学のスクラムハーフである小畑健太郎の名前があった。

 彼こそが、小畑道弘の長男である。

 小学2年生の時、再放送で流れていた「スクール☆ウォーズ」を見たのが、ラグビーを始めるきっかけだった。体は小さいが、負けん気だけは人一倍強かった。そんな少年は、いつしか父と同じ道を歩んだ。それは、ごく自然なことだった。

 伏見工業では父と同じように主将を務めた。帝京大学に進むと、スタンドオフからスクラムハーフに転向し、大学1年からレギュラーをつかんだ。入学から3年連続で日本一を経験。最終学年となる今季、史上最多を更新する大学選手権10連覇を目指す戦いが、既に始まっている。

【次ページ】 「ワールドカップを目指したい」

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