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ドジャース“マン振り野球”の中で
マエケンの好守にプロの技を見た。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2018/11/03 11:00
ワールドシリーズ第3戦、前田健太は無死一、二塁からのバントを見事に処理して三塁で封殺した。
フライボール革命の弊害。
この試合、ドジャースは無死一塁の好機を5回、7回、9回、13回と作り出した。だが、彼らはそのすべての場面で次打者が得点圏となる状況を作り出せなかった。フライアウトが3、三振が1。「Big Swing!」を繰り返した結果、総アウト数に対するフライアウトと三振の割合は両チームの間にこれだけの差が生まれた。
レッドソックス 35/54 64.8%
ドジャース 41/51 80.4%
昨年もリーグ4位の221本塁打を放ったドジャースだが、ここまで“マン振り野球”は顕著ではなかった。脇を固めるユーティリティーのキケ・ヘルナンデスやオースティン・バーンズ捕手などは進塁打や逆方向の打撃を実践し、身の丈にあったアプローチも見せていた。
ところが、今年はジャスティン・ターナー内野手を除く全員が常に本塁打狙いである。ファーハン・ザイディGMが推進する『フライボール革命』や『バレルゾーン』の理論を忠実に実践している。その中で唯一、状況に応じた打撃を続けるチームの主砲ターナーの打撃をバック氏は実況でこう表現した。
「Best Hitter in the league」
マエケンが示したプロの技。
選手が持つ才能や技術は間違いなく世界最高峰。なのに、味気ない野球に特化していくメジャーリーグの流れ。その中でこの第3戦、前田健太が“日本野球ここにあり!”とも言うべきプロの技を見せてくれた。
同点の15回。7人目として登板した前田はいきなり無死一、二塁のピンチを招いた。打者は8番のクリスチャン・バスケス。ドジャースならばここで犠打のサインはないが、レッドソックスならば当たり前。前田は内角に球威を殺した直球を投げ込むと同時に三塁側へダッシュ。バント処理すると振り向きざまに三塁へ矢のようなストライク送球で封殺。流れに乗った前田はその後5者連続三振の快投を見せた。
すべてのプレーがパーフェクトだったスーパー・ファンダメンタルにも前田は涼しい顔で言った。
「相手がバントをやりやすいような球をしっかり投げて、三塁側にしてもらうっていうのが一番大事なので。投げることに集中というよりも、ボールを取りにいくことに集中してアウトにできたので、そこはすごく狙い通り。やらせてアウトを取るっていうのは僕の中での理想だったので、うまくいきましたね」