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2度の解任劇で失格の烙印……。
ロペテギの運の炎を消した死神。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byUniphoto Press
posted2018/11/01 10:30
あまりにも劇的な1年間を過ごしたロペテギ。彼の能力そのものが否定された訳ではないが……。
チャンスは作るがゴールが遠い。
それでもスタートは悪くなかった。
ジダン政権下では見られなかった“ボールを握る”チャレンジングなスタイルに果敢に取り組み、リーガでは開幕3連勝。CLのグループステージ第1節でもローマを相手に3-0の快勝を飾ってみせた。
歯車が狂い始めるのは、リーガ第6節のセビージャ戦で今シーズンの初黒星、それも0-3という完敗を喫してからだ。
ボールは持てても、崩し切れない。飽きるほどチャンスは作ってみせるが、果てしなくゴールが遠い。
セビージャ戦以降の公式戦5試合で0勝1分4敗と勝利から見放され、その間に奪ったゴールはわずかにふたつ。それも左SBのマルセロが挙げたもので、ギャレス・ベイル、カリム・ベンゼマといった前線のタレントからはまったく快音が聞かれなかった。
ロナウドがいてくれたら……。
簡単に言ってしまえば、クリスティアーノ・ロナウドの穴を埋めきれなかったのだ。
もちろんこの大エースを擁していても、昨シーズンのリーガでは早々に優勝の可能性が潰えている。それでも崩れてしまいそうな時、心が折れそうな時、チームに勇気を与えるゴールを、敵の闘争心を打ち砕くゴールを、高い確率でC・ロナウドが決めてくれた。リーガでは不発でも、その分をCLの大舞台で取り返してくれた。
決めるべき時に決めてくれるエースがいないから、辛抱しきれずに守備が崩れる。後ろが安定しないから、プレスが効かない。そんな悪循環に陥ってしまったのだ。
ここにC・ロナウドがいたら──。
そう思うシーンがいくつあっただろう。C・ロナウドが去っても9番を背負うベンゼマは“黒子”の癖が抜けないのか、肝心な時にエリア内から遠く離れている。
いくつかの不運にも見舞われた。
イスコやダニエル・カルバハルなど故障離脱者が相次ぎ、さらにロシアW杯でファイナルまで戦ったルカ・モドリッチとラファエル・バランは、とりわけメンタル面のコンディション調整に苦しんでいる。