欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
2度の解任劇で失格の烙印……。
ロペテギの運の炎を消した死神。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byUniphoto Press
posted2018/11/01 10:30
あまりにも劇的な1年間を過ごしたロペテギ。彼の能力そのものが否定された訳ではないが……。
もう少し待つべきだったのではないか。
C・ロナウドに代わる実力派ストライカーを獲得せず、貴重なバイプレーヤーだったマテオ・コバチッチをチェルシーに放出し、新戦力はフェデリコ・バルベルデやビニシウス・ジュニオールなど“近未来への布石”が中心。そう考えれば、フロントの怠慢が招いた今シーズンの停滞と言えなくもないはずだ。
10節を終えて4勝2分4敗の9位という成績は到底受け入れられないし、当然ながらロペテギの責任も問われてしかるべきだろう。一部選手との間に亀裂があったと噂されるなど、マネジメント能力にも少なからず疑問符が付いた。
とはいえ、従来のリアクションフットボールからポゼッションスタイルへと大きく舵を切ったのだから、軌道に乗るまで時間がかかるのは仕方がない。
それに現段階であっても、リーガでの平均ポゼッション率はバルサの64%にこそ及ばないものの62.4%の高水準(リーグ3位)をキープしており、さらに1試合平均のパス成功率は89.5%と、こちらはバルサを抑えて堂々リーグトップの数字を誇っているのだ。
ロペテギの死神はペレス会長だった。
ちょっとくたびれたスーツにスニーカーという、通勤電車で見かけるサラリーマンのような出で立ちのロペテギは、ジダンのようなカリスマ性は微塵も備えていない。それでも、新境地を開拓しようというチャレンジングな姿勢は評価に値したはずだ。
スペイン代表との関係を裂いてまでして強引に引き抜いた後で、最大の得点源であるC・ロナウドを放出し、その穴埋めもしない。それで成績不振に陥れば「戦力と結果が釣り合っていない」とすべての責任を押し付けて、わずか2カ月で放り出す。これぞまさしく“マッチポンプ”の極みだろう。
ロペテギの人生を弄び、彼の持っていた運というロウソクの炎を吹き消したのは、気まぐれな死神──、いやペレス会長その人であった。