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鹿島スタジアムキャンプに潜入取材。
ピッチ上に泊まり、星を眺めてみた。
posted2018/10/31 10:00
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph by
Hirokazu Ikeda
2018年、平成最後の夏。
鹿島アントラーズは、8月11日から12日にかけてクラブ初となるスタジアムキャンプを実施した。家族連れを中心に54組166人が参加し、ピッチ上に張られたテントで宿泊。いつも選手たちが戦う戦場で、ボールを蹴るも良し、星空を見上げながら過ごすも良し、思い思いの一夜を過ごした。
クラブ初のキャンプイベントについて、カシマサッカースタジアムの萩原智行副所長は言う。
「ピッチを使って、いろいろなことをやりたいという思いから始まり、コンサートから運動会まで、大きなイベントから地域イベントまで、さまざまな構想がありました。せっかくイベントをやるなら、冬ではなく夏。寒ければ何かと外で楽しめないだろうから、あたたかい時期に何かできないか。その中で実現したのが今回のイベントでした」
実現のきっかけは、芝の張り替え。
プロサッカークラブのスタジアムキャンプイベントは、これまで川崎フロンターレやコンサドーレ札幌などが実施。ただ、札幌はウォーミングアップゾーンで、川崎Fは陸上トラックでの寝泊まりにとどまり、傷みやすい天然芝の上に寝泊まりできるキャンプは、今回が初めてだった。野球チームでも実施される例を見るが、人工芝だからこそ本来の野球に影響なく開催できている側面がある。
カシマスタジアムで実現できた要因の1つに、今季から夏芝の新品種への張り替えがあった。これまでの芝は、冬によく育つ「冬芝」を採用していた。そのため夏場の使用は、Jリーグの日程を踏まえても、ピッチに与える悪影響は目に見えていた。かと言って、通常貸し出しているユースや高校サッカーなど、アマチュアスポーツの使用も制限できない。夏に弱い冬芝を守るためには、現状維持が精一杯だったのだ。
しかし、今季から夏によく育つ「夏芝」に張り替えた。それによって、夏は“ダメージを抑える”という観点から、“より育つ芝をどう活用するか”という観点に変わった。
アントラーズは今年3月、クラブプロジェクトとして「ターフプロジェクト」を発表。短納期でターフを張り替えるビッグロール工法や独自の養生技術を新たに確立させ、芝のコンサルティング事業に取り組んでいる。芝が傷めば張り替えればいい。根本的な発想の転換によって、試合の前に一定のメンテナンス期間を設ければ、確実な回復を計算できるようになったのだ。