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大岩剛監督が褒める鹿島の成長度。
ACL決勝に進出し「非常に伸びた」。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFP/AFLO
posted2018/10/27 16:30
鹿島アントラーズの監督にかかるプレッシャーは強い。その中で、大岩剛は大きなことを成し遂げようとしている。
監督が教えすぎない、という思想。
大岩は2点のリードを許しても冷静だと語っていた。そのことについて聞いてみた。
――今季はけが人が多くて、主力が移籍でいなくなったりと、選手起用についても戦術よりもコンディションを重視せざるをえない場面もあったけれど、結果として選手が非常に伸びたように感じます。
「総力戦で戦うというのは常に思っているけど、ここにきて選手が1ランクも2ランクも成長している。自信を持っているなぁって。強い信頼を持って送り出せるから」
――大岩監督は、選手どうしで話し合わせることを重要視しているのでしょうか?
「選手には、自分でアクションを起こすことを求めている。そのためにはチームメイトに伝えることが大事になるし、同時に話を聞くことも必要だから、常にそういうコミュニケーションをやろうとシーズンを通して言い続けている。ピッチのなかで起きるいろんな状況に対して、『じゃあどうしよう』というのを選手自身が統一していかなくちゃいけない。その積み重ねで、選手が自信を身につけているように感じています」
――監督から選手に対しては教えすぎないようにしているんですか?
「そう。うちは自立している選手が多いし、若い選手にも自立してほしいから」
大岩に残る2つのチームの記憶。
大岩は2000年代前半のジュビロ磐田。そして2000年代後半に3連覇を遂げた鹿島アントラーズでともに黄金期を過ごした。両クラブの共通点を挙げるなら、選手が自分たちだけで試合をコントロールする力があったということだ。チームを成熟させ、ゲームを修整して形作るという行程が、選手主導で行われていた。だからこそ、チームは強かった。
しかし、大岩が目指すのは、そんなチームなんだろうと思った。
伝えるべき情報と、監督からは伝えない情報。チームの状況、そして選手の成長具合を判断しながら瞬時にそれを判断して適切な言葉で告げるのは、監督として非常に重要な力だ。
試行錯誤はこれからもずっと続くに違いない。それでも、クラブ史上初のACLファイナル進出を決めた試合後の公式会見で大岩はこう語っている。
「後半のスタ―トで失点したことで、自分たちの戦い方を苦しくしてしまった。それでも選手たちは慌てず、しっかりとひとつの矢印、ベクトルをもって戦い続けた。それが今日の結果になったと思います」
大岩が感じた手ごたえは大きいだろう。鹿島は今後、余韻に浸る暇もない過密日程が続く。それでも11月3日の第1戦はホームで、そして1週間後には敵地テヘランで、決勝の舞台に立つ。