プロ野球亭日乗BACK NUMBER
原監督、就任会見の発言を分析する。
「管理野球」と「のびのび」の共存。
posted2018/10/24 11:40
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
それはちょっと矛盾した言葉に聞こえたかもしれない。
10月23日。東京・千代田区大手町の読売新聞東京本社で行われた巨人の高橋由伸前監督の退任と原辰徳新監督の就任会見。新旧監督が顔を揃えての会見は、巨人でも15年ぶり。高橋監督の退任挨拶の後に2人の監督が握手を交わす巨人ならではの伝統の儀式を終えて、原新監督の質疑応答は始まった。
背番号83は、2002年からの第1次監督時代につけていたバックナンバーだ。
「原点に返るということでこの番号にした」
こう語った新監督は、目指すチーム像をよどみなくこんな風に語っている。
「まず戦うチーム。目標を定めたチームというのが一番大事なことだと思います。ジャイアンツというチームが勝つこと、これが最大なる目的、目標であります。それに値する選手が誰なのか。言葉は適切ではないかもしれませんけど、“個人軍”ではなく、巨人軍でなければならない。束ねられた1人ひとりの力をしっかりと観察し、そういうことを目標としてチームを作っていきたい」
原監督の口から「のびのび」。
2回目の監督時代、特にその終盤期は、非情とも思える選手起用でチームをひたすら勝利へと導いていく姿が印象的だった。
その姿には、恐怖こそチームを動かす最大のパワーではないか、と感じたことすらある。
そして今回託された使命が、4年連続でペナントから遠ざかっているチームの建て直しであることは誰の目にも明らかだ。
だとすれば厳しい管理野球で再び巨人を常勝チームへと導く。そんな決意表明にも聞こえたが、そんな矢先に、指揮官の口からは意外な言葉が飛び出したのである。
「1つ選手たちに言いたいのは、僕の言葉は堅っ苦しく伝わっているかもしれないけど、スポーツの原点はのびのびと楽しむこと。原点に戻るという点では、そういうのびのび野球をするんだということでやっていきたい」
おそらく翌日のスポーツ紙の見出しはこれで決まりのはずだ。
「のびのび野球」――。
原監督の口から飛び出した意外な言葉だったが、ただ、新指揮官の語る「のびのび野球」とは、選手が自由、気ままにプレーする野球ではないことも明らかである。