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広島カープ、34年ぶりの日本一へ。
原動力は「歩く力」と「厚き矛」。
posted2018/10/25 11:00
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
セ・リーグのCSファイナルステージは、あっけなく3戦で決着がついた。巨人はファーストステージではエースの菅野智之がノーヒットノーランの快投を演じ、敵地での連勝で2位・ヤクルトを下していた。
つまり、最高のムードで乗り込んできた巨人を、見事に返り討ちに仕留めた。10月19日の第3戦のテレビ視聴率は、広島地区ではなんと平均49.1%を記録した。
レギュラーシーズンでの対戦は17勝7敗1分け。3連勝は実力差がそのまま出たとも言える。では、どうしてこれほどまでに実力差がついてしまったのか。いくつかのポイントを指摘したい。
巨人の盾を突き破った四球。
まずは四球。この3試合に限れば、巨人の投手は広島打線を打率1割9分8厘に封じ込んでいる。巨人は1割3分2厘とそれ以上に打たせてもらえなかったことや4本塁打を浴びたことも敗因だが、両者の攻撃力を分けたのは要所での四球だ。
3試合トータルで広島の打者が選んだ四球は11個で、巨人は9個(敬遠1含む)。広島はうち4人が得点を記録している。象徴的だったのが第1戦の1回に田中広輔が四球で歩き、菊池涼介との間でヒットエンドランを決め、無死一、三塁と好機を広げた。
田中は内野ゴロの間に先制のホームを踏み、快勝への流れをつくった。さらに第2戦では8回二死走者なしから得意の逆転勝利に持ち込んだのだが、そのきっかけは代打の松山竜平がきわどい球を見極め、四球をもぎ取ったことだった。
レギュラーシーズンで選んだ計599四球は、リーグ最多である。同時に投手陣が与えた535四球もワーストである。一方、巨人投手陣の406与四球はリーグ最少だ。リーグ防御率も唯一の3点台(3.79)を誇る、いわばセ界最強の盾が、リーグ最多721得点の最強の矛に挑む。そういう図式だったのだが、巨人の盾はもろくも広島の矛に突き破られてしまった。
警戒することは必要ではあるが、慎重になりすぎて四球を与えてしまうのは、広島戦で最も気をつけねばならないポイントだった。