プロ野球亭日乗BACK NUMBER
原監督、就任会見の発言を分析する。
「管理野球」と「のびのび」の共存。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/10/24 11:40
3度目の原体制は過去2回と同じなのか、まったく違うのか。記者会見から巨大な期待感が渦巻いた。
「チームを1つ前に進めるバントだった」
もちろん発言の意味は選手も理解している。
ただ、原監督はさらにどこかでこの方針、この姿勢を徹底させる機会を窺っていた。
それが6月5日のこの場面だったのである。
「平然と送りバントをする阿部の姿を選手たちが見て、どんな言葉よりも強いメッセージがあった。『あの阿部さんでもサインが出るんだ』『あの阿部さんでもああやって送りバントを難なく決めるんだ』。あのバントからチームのムードがガラッと変わった。あの送りバントは走者を進塁させるためだけではなかったんだよ。チームを1つ前に進めた送りバントだったんだ」
必要とあらば2冠に輝く主軸打者でも犠牲を厭わない。
それが勝利を至上命令とする強いチーム、原が理想とするプロの集団の野球ということなのである。
「全権監督」はどんな結果を残すのか。
20勝できる投手に3割、30ホーマーできる打者が「のびのび」とその能力を発揮できる環境を整えたい。ただ、ひと度勝負の局面になれば、その選手たちが自己犠牲を厭わずに一発で送りバントを成功させられる。
自己犠牲を求める「管理野球」と「のびのび野球」という一見矛盾した2つの姿が当たり前に共存する。
それこそ原新監督が選手に求める、巨人の伝統の野球なのである。
「期待するのは、強いジャイアンツを作っていくということです。チームに関してはすべてを監督にお任せするということ。特に編成に関しても監督の意向を完全に尊重しようと思っています」
会見に同席した山口寿一オーナーは、改めてチーム運営だけでなく編成権を含めた「全権監督」であることを明言した。
前回はフロントとの軋轢や様々な問題を抱えながらも10年間で3連覇を2回の計6度(通算7度)のリーグ優勝と2度の日本一(通算3度)を手中に収めている。
3度目の登板では全権を託された「のびのび野球」で、今度はどんな結果を残すのか。グラウンド上だけでなく、その一挙手一投足から目が離せなくなりそうだ。