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南野拓実を育てたザルツブルク。
ステップには最適、長居は……?
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byUniphoto press
posted2018/10/16 11:00
リーグでは無敵を誇るレッドブル・ザルツブルク。南野拓実が得たものは大きいが巣立ちの時も近づいている。
昔の名を継ぐクラブが新たにできた。
両クラブのディレクターを務め、人材をライプツィヒや他国へ“遡上”させるラルフ・ラングニックに、「オレたちのクラブをぶっ壊した」とファンは憤る。クラブを取り巻く人の思いや、クラブそのものについて、あまり理解はされていないのかもしれない。
確かにレッドブルによる買収以降、元イタリア代表監督ジョバンニ・トラパットーニや元ドイツ代表ローター・マテウスの招へいで、“成金臭”を漂わせた。クラブカラーを変えた首脳陣に怒った一部のファンは、昔の名を継ぐクラブを新たに創設した。だが、クラブには確固たる背骨が通っている。
育成に力を注いできた結果も出ている。
歴史を体現するのは、ライトバックのシュテファン・ライナーだ。今月の北アイルランドとデンマークとの対戦に向けてオーストリア代表に選出されたが、まだ地元ファンの中では父の名の方が通っていることだろう。
父のレオ・ライナーはキャリアの序盤と最後を、まだオーストリア・ザルツブルクと呼ばれていた頃のクラブで過ごし、リーグ通算出場数は250試合を超えた。親子そろって、働き場は同じ最終ラインの右サイド。父は昨季も、クラブのU-16チームで後進の指導にあたっていた。
ガンガン攻め上がるライナーの逆サイドに入る、バランス型のアンドレアス・ウルマー主将、GKチツァン・スタンコビッチとともにオーストリア代表に呼ばれているのが、この4人の中で最年少のクサバー・シュラガー。13歳でクラブに加わって以降、アカデミーの各年代でプレーしてきた生え抜きだ。
派手さはないが21歳にしてサッカーIQの高そうなプレーを見せるのは、FWや守備的MFなど、多くのポジションを経験してきたからだろうか。いずれにせよ、U-17を第一歩として年代別代表に選ばれてきた事実は、クラブが育成にも力を注いできた証左である。