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メジャーの流行「ブルペンゲーム」。
ポストシーズンは継投策が主流。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2018/10/13 08:00
日本時間10月10日に行なわれた地区シリーズでは、レッドソックス、ヤンキース両軍あわせて10人の投手を注ぎ込んだ。
田中自身も戦術変化を理解。
公式戦中であれば、間違いなく、2人とも続投だった。もし、点差に余裕があれば、100球前後まで投げる可能性もあっただろう。だが、ともに翌日は休養日。負けられない大一番だけに、ピンチを招いてからでは後手に回る可能性もある。事前にリスクを回避するうえでも、豊富な持ち駒を余すことなく使い切ろうと考えるのも無理はない。
いわば、「攻めの継投」。
ブーン監督は続ける。
「それほど難しい決断ではなかった。ただ、公式戦とは明らかに違う。そこに疑問の余地はない。プレーオフは公式戦とはまったく違うと思う」
田中自身も、昨今の戦術の変化は理解している。
「自分のすべては出し切れたと思います。こういう形でマウンドを降りるのは、ポストシーズンではあること。次の登板につなげていければいいと思います」
戦術は選手の納得あってこそ。
負けられない一戦で、いかにして27個のアウトを取るか。
ドジャースが、8月中旬から前田健太を救援に配置転換したのも、ポストシーズンを見据えて救援陣を増強し、昨年、目前で逃した世界一を勝ち取るためだった。
もっとも、今季、一部で流行した救援投手が先発する「オープナー」とは、少しばかり趣が異なる。年間を通して先発ローテーションを守ってきた投手ではなく、救援投手を大一番で先発起用するのは、あくまでも奇策に過ぎない。
確かに、先発陣がコマ不足であればやむを得ない。ただ、仮に1試合で成功したとしても、7試合制のシリーズで効果的かと言えば、そう簡単ではない。何よりも、登板機会を失った先発陣が納得するはずもない。
レッドソックスのベテラン左腕デービッド・プライスは、先発投手としてのプライドを隠そうとしない。
「マウンドに上がれば、最後まで投げ抜くつもり。それは若い頃から変わっていない」
短期決戦とはいえ、メジャーではワールドシリーズ制覇まで11勝、最多で19試合を戦わなくてはならない。だからこそ、選手起用、特に投手の継投は重要度が高い。
新しい戦術、戦略は、結果的に選手が納得することで定着していく。
奇をてらう策は、最終的に、策におぼれる結果になる。