サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
手倉森誠が目を細めるリオ世代の飛躍。
“谷間”がついに代表の中心に。
posted2018/10/01 10:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Kenzaburo Matsuoka
その日、手倉森誠は既視感を覚えた。
2015年7月1日、彼が率いるU-22日本代表はU-22コスタリカ代表とのテストマッチに臨んだ。ダブルボランチの一角を担った遠藤航が、長短のパスで攻撃のスイッチを入れながら崩しにも絡んでいく。
トップ下の中島翔哉が守備ブロックの間でボールを引き出し、1トップの浅野拓磨は持ち前のスピードを生かして相手守備陣の背後を取る。攻守ともに連動性の高いサッカーで、2-0の快勝を収めた。
手倉森が崩しのイメージとして選手たちに浸透させていたのは、「ダイアゴナルのパスと動き出し」である。
そして、2018年9月11日に行なわれた日本対コスタリカ戦で、彼のもとでリオ五輪を戦った選手たちは身体に沁み込ませたプレーを表現した。
南野のゴールと斜めのパス、動き。
1-0で迎えた66分だった。左サイドから中央へ持ち出した中島の動きに合わせて、遠藤がペナルティエリア左へ侵入する。DFラインの背後を突いた背番号6に、背番号10からパスがわたる。
遠藤がグラウンダーのクロスをゴール前へ通すと、南野拓実が左足でゴールネットを揺らす。日本に2点目をもたらした彼も、リオ五輪のメンバーだ。
「彼らはリオ五輪へ向けて練習してきたことを、身体に残しているな、と思いました」と手倉森は笑う。
「日本が世界に示すサッカーは選手たちに伝えたつもりで、それは地上戦、デュエルにかからないサッカーです。そこでキーになるのは斜めのパスと斜めの動き。中島のボールの持ち出し、遠藤のランニングとパス、南野のポジショニング。リオ五輪のチームが共有した崩しだった。3年前のU-22コスタリカ戦でも、同じような崩しを見せたものでした」