欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
降格候補、まさかのプレミア上位。
ワトフォードのキャラと癖が凄い!
text by
吉江武史Takeshi Yoshie
photograph byUniphoto Press
posted2018/09/28 17:00
序盤戦で好スタートを決めたワトフォードのイレブン。並み居る強豪相手にレスターの再来となるか。
VIP席でエルトン・ジョンも満足。
実際、現時点では確かに目を見張るチームだが、9月の時点で次のレスターと褒めそやすのは時期尚早だし、昨季の絶対王者であるペップ・シティや進境著しいユルゲン・クロップのリバプールがいるなかで優勝するのは、まず無理だろう。
だがそれでも、ワトフォードというクラブにはピッチ外も含め、「注目しておいて損はない」と思わせるだけの不思議な魅力がある。
このクラブ、規模は小さいがなかなかどうして個性的で、とてもキャラクターが立っているのだ。たとえば、ここまで主力選手や監督の話をしてきたが、クラブの「最大の顔」は本拠地ビカレイジ・ロードの観客席にしばしば顔を出し、今季はVIP席で誰よりもご満悦な様子のエルトン・ジョンである。
英国が世界に誇る国民的シンガーソングライターは、いわく「6歳からスタジアムに通っていた」という地元育ち。歌手として成功した後もクラブをサポートし続け、1976-87年、1997-2002年と2期にわたって会長まで務めている。当時は「新戦力獲得の資金を稼ぐためにコンサートをしていた」というほど、筋金入りのワトフォード・サポーターだ。
妙に“イタリア臭”が強い。
そして、現在のクラブオーナーも相当に癖がある。'12年からクラブを所有するのは、ウディネーゼのオーナーとしても知られるポッツォ・ファミリーだ。その影響で、近年のワトフォードは“イタリア臭”がやたらと強い。
良い意味で言えば、かつてウディネーゼに在籍したペレイラのような掘り出し物を独自のスカウティング網で発掘しているのだが、その方向性は悪い意味にも当てはまる。
今はチェルシーのコーチを務めるジャンフランコ・ゾラに始まり、元ナポリやインテルのワルテル・マッツァーリ、ジュゼッペ・サンニーノといったイタリア人監督や、はたまたキケ・フローレス、マルコ・シウバ(現エバートン)のようにその時“旬”の監督を雇っては短期間で解任し、コロコロとトップのクビを入れ替えるのはまさにカルチョの病。
現フルアムのスラビシャ・ヨカノビッチ監督は2014-15シーズンにチームをプレミア昇格へと導いたのに職を追われたし、そもそも彼はそのシーズンだけでの4人目の監督で、それまでにはオスカル・ガルシアが1カ月で、ビリー・マッキンリーに至っては「クラブの長期的利益のため」という理不尽な理由で8日間しか指揮をさせてもらえなかった。