メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平の復帰登板と“自制心”。
イチロー、野茂、黒田からの教訓。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2018/09/11 08:00
投手復帰となった9月2日アストロズ戦では、最速159.8キロを記録したものの、2回1/3(2安打2失点)で降板した。
最強打線を前に全力投球。
それが、である。登板前に言い聞かせていた誓いをマウンドでは忘れてしまった。
1回の最速は99.3マイル(約160キロ)。直球の平均速度は96.8マイル(約156キロ)。故障前同様の投球スタイルは自身の想定を超えていたことになる。だがそれも、戦う男の本能を考えれば、無理のないことと感じる。
スプリンガーから始まり、アルテューベ、ブレグマン、コレアと続く破壊力満点のアストロズ打線は、今やメジャー最強の称号を持つ。その相手に“自制心”を持って投げることはなかなか難しい。
ましてや、大谷はまだ24歳。日本ハム時代からケガなどで自制を求められる状況下で全力プレーをつい見せ、栗山英樹監督から怒られていた事実は記憶に新しい。
「やっぱり人が入って」
当日はチケット完売の4万1506人の大観衆でもあった。
アストロズ戦の復帰は不適切だった?
米メディアは、マイナーでの調整登板を経ずに“ぶっつけ本番”とした過程をケガの要因と散々に批判していたが、ESPNの全米中継が用意され、地区首位を走るアストロズの日曜日の本拠地試合は超満員の観衆が集まることが容易に想像できた。
全力プレーを自制することが苦手の大谷にとって、アストロズ戦での復帰は相応しくなかった。翌日からは地区最下位レンジャーズとの試合が控えていたのだから、尚更のこと。エンゼルス首脳が批判されるべきはこの点ではないだろうか。
だが、既にあとの祭り。逆の言い方をすれば、失敗は成功へのターニングポイントとなる。ひとつひとつのことにしっかりと向き合い、対処していくことは最も重要なことである。
エンゼルスと大谷が立てた復帰計画が道半ばで終わった。その事実を考えれば、もう一度、PRP療法を選択し、やり直す可能性は残る。その上で大谷にはマウンドで自制心が求められる。