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消滅危機だった日本GP存続決定!
30回を迎える鈴鹿が勝ち取ったもの。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2018/09/09 17:00
昨年は鈴鹿で初のポールポジションを奪ったハミルトンが優勝。来季以降もこの光景が見られるのは何よりだ。
子ども、学生料金をお値打ちに。
「今年の春に、ヨーロッパでFOMと交渉する予定があったんですけど、急きょ、私が行けなくなった。そうしたら、FOMから『4月に中国GPがあって上海に行くから、その後日本で打ち合わせしよう』って、連絡が来ました。それまで、FOMの契約担当のスタッフが日本に来たことはなかった。
さらにその後、FOMとモビリティランドの間にホットラインを設けて、お互いのメンバーがダイレクトに話し合いできるよう、テレビ会議システムも導入されました」
日本GPは、鈴鹿が開催権料をFOMに支払い、鈴鹿はチケットを売って開催権料を賄う。したがって、チケットが売れようが売れまいが、FOMの収入に変わりはない。しかし、観客が減るということはF1に魅力がなくなっているということ。
それは鈴鹿だけでなく、世界的な傾向で、FOMにとっても無視できない問題だった。そこで体制が新しくなったFOMは、鈴鹿に歩み寄り、一緒になってF1を盛り上げようと交渉のテーブルについた。
「お客さんを増やさなくてはいけないというところで、両者が共通の認識を持ち、手を握り合うことができた」と言う山下は、今年のチケットの値段設定に関しても大胆なアイディアを採用した。子どもと高校生・大学生の値段を劇的に下げたのだ。この結果セールスは3倍に上がった。
サーキット内看板などの権利も。
1人あたりの単価が下がったため、売り上げ自体に大きな変化はない。それでも、若い世代をサーキットに呼び込むことは確実に将来に繋がっていく。それはFOMにとっても、歓迎すべきことだ。
FOMは鈴鹿に対して、さまざまな譲歩を差し出した。
「サーキット内の看板に関しては、F1開催期間中の権利はこれまですべてFOM側が持っていましたが、新しい契約では一部、われわれにも権利が与えられました。
もちろん、権利を持っていても売れないと元も子もないんですが、頑張れば収入を得ることができる、という仕組みに2019年から変わります。看板だけでなく、PRブースの権利であったり、パドッククラブの権利など、さまざまな権利に関して、見直しが行われました」(山下)