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幼稚園児のようにボールを追う、
ライプツィヒとラングニック哲学。 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byGetty Images

posted2018/09/07 08:00

幼稚園児のようにボールを追う、ライプツィヒとラングニック哲学。<Number Web> photograph by Getty Images

2018-19シーズンは1分け1敗スタートのライプツィヒ。しかし今季もラングニック監督のもとで走るサッカーを極めるはずだ。

キラーパスで味方を殺してはダメ。

 目から鱗が落ちた思いです。

 スペースにボールを蹴り飛ばすパスではなく、スペースへ到達する選手とボールの軌道を点で一致させる。つまり、キラーパスで味方を殺してはダメなのです。このときから、「ラングニックっていう人は、一体どんなサッカーを目指しているのだろう?」と興味を持ち始めたのです。

 ホッフェンハイムの監督を退任した後、ラングニックはシャルケの監督をシーズン途中に辞めて表舞台から去りました。そして、2012年からはオーストリア・ブンデスリーガのレッドブル・ザルツブルクと、当時4部だったRBライプツィヒのスポーツディレクター(SD)に就任します。

 そしてここから彼は、ドイツサッカー界に衝撃をもたらすサッカースタイルを標榜するのです。

練習中には8秒、10秒ルールが。

 ラングニックのサッカーを表すフレーズとして本人が多用する言葉があります。それは、「Acht Sekunden,Zehn Sekunden」というもの。日本語に訳すと「8秒、10秒」という数字のカウントなのですが、その要旨は「ボールを失ってから8秒以内に相手からボールを奪い、10秒以内に攻撃を終える」という意味です。

 ライプツィヒのサッカーは90分間に渡ってこのプレーの連続。チーム内の約束事を具現化させるため、ラングニックはこんな練習メニューを用いていると言います。

「我々が独自に作った『カウントダウンクロック』を用いるんだ。アシスタントコーチがそれを使って『8秒ルール!』と言うと、その時計がカチッ、カチッとなる。選手たちは、そのカウントの間にボールを奪わねばならない。そしてボールを奪ってからは、今度は『10秒ルール』だね。10秒以内に攻撃を終わらせるんだ」

 ラングニックに付いた異名は『プロフェッソア(教授)』。自身はプロ経験がない中で、下部カテゴリーのクラブから着実に指導者経験を積み、先達の薫陶を受けながらも独自の理論を確立させ、異端なサッカースタイルを築き上げました。

 シャルケの監督を退任した後にライプツィヒのSDを引き受けたのにも明確な理由があり、彼は以下の3つがあれば、今のライプツィヒのサッカーを他のクラブもコピーできると語っています。

「それは資本、そして概念と能力だね」

【次ページ】 来季からナーゲルスマン就任だが。

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