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稀勢の里の完全復活は実現するか。
希望と絶望、相反する双方のデータ。
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2018/09/08 11:30
稽古の勝敗数すら報道されるほど、稀勢の里の注目度は段違いだ。文字通り進退がかかり、今場所は見逃せない。
横綱の平均勝率は8割弱だが。
過去のデータを見ると、非常に厳しいと言わざるを得ない。まずは、歴代横綱の「最後の1年」のデータを見てみよう。
初代若乃花以降、横綱の平均勝率(休場を除く)は8割を少し下回る水準なのだが、これを上回る成績を残しながら引退した力士は過去に大鵬、玉の海、曙、朝青龍の4人しか居ない。
玉の海は現役中にこの世を去っており、朝青龍は不祥事で土俵を去った。つまり、成績が平均値を下回るということは引退が近づいているバロメーターなのだ。最後の1年で2度優勝している佐田の山も、千代の富士でさえもこの水準には到達していなかったということを付け加えておく。
翻って稀勢の里の横綱としての通算成績は、26勝22敗87休。勝率は5割4分2厘。8割には大きく届かない。この1年の成績は、もはや見るまでもないだろう。
休場が増えると引退が近づく。
そして、横綱最後の1年の休場数である。初代若乃花以降ですでに引退している25人の横綱のうち、最後の1年で2場所以上休場している力士は実に14人もいる。
引退場所を除いて全て出場している力士は柏戸、佐田の山、玉の海、曙、朝青龍の5人しかいない。逆に4場所以上の休場となると栃ノ海、北の富士、隆の里、北勝海、貴乃花、三代目若乃花、武蔵丸と、かなり昔から現代まで満遍なく存在していることが分かる。横綱といえど、休場が増えると引退が近づくというのは、今も昔も変わらないのである。
そして稀勢の里は、8場所連続休場している。
肉体的な懸念としては、巨漢力士の晩年にありがちな体重増という傾向も稀勢の里に当てはまる。把瑠都、雅山、曙、小錦、朝潮。彼らは29歳という壁を越えられずに成績が下降の一途を辿っている。例外は武蔵丸だが、彼でさえ31歳から休場が目立つようになった。
稀勢の里はその点で言えばまだピークが長かったのかもしれない。場所前の体重測定で昨年5月場所の184キロから176キロまで戻しているのは良い傾向ではあるのだが……。
数字で見れば見るほど非常に厳しいと言わざるを得ないのが、稀勢の里の現状なのである。