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谷口彰悟と車屋紳太郎の“熊本兄弟”。
川崎のCB物語は日本代表へと続く。
posted2018/09/05 11:50
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Getty Images
現代サッカーを生き抜くセンターバックは、もっと評価されても良いのではないか。
そんな風に思うことがある。
まず、ひと昔前に比べると、求められる能力値が格段に高い。速さ、高さ、強さというトータルの守備力に加えて、ボールを保持したときの足元の技術も必要になっている。一定のビルドアップ能力がなければ、プレッシャーの的として相手に狙い撃ちされてしまうのが宿命だからだ。
守備の万能性を兼ね備えていても、足元に不安を抱えたままではトップレベルで生きにくくなっている。クラシックなセンターバックにとっては、過酷な時代である。
J1チャンピオンチームである川崎フロンターレは、昨年就任した鬼木達監督が率いてから失点の少ないチームとなった。今季は第25節を終えて19失点で、1試合平均の失点は1点以下だ。1試合未消化ではあるものの、首位・サンフレッチェと並んでリーグ最少失点を誇っている。いまや川崎は堅守を看板にできるチームなのである。
その堅陣の中心にいるのが、谷口彰悟と車屋紳太郎のセンターバックコンビだ。車屋は左サイドバックのレギュラーだったが、第20節の横浜F・マリノス戦から主戦場をセンターバックに移した。
車屋と谷口とのコンビ形成後の6試合で、無失点が3試合だ。車屋は対人守備に滅法強いというタイプではないが、チームの守備力は高いレベルで安定している。
「川崎のCB」に必要な能力は?
なぜか。
それは、川崎のセンターバックに求められる資質が、簡単にボールを失わないことにあるからだ。スピードに秀でている谷口と車屋は高いディフェンスラインを強気に保ち、ボールを持って相手陣地まで運び、ハーフコートマッチで押し込み続ける。
ビルドアップのやり直しも何度も繰り返し、中盤への出し入れをスムーズに行いながら、ゲームメークも担う。ボールを保持してイニシアチブを握って戦い続ければ、相手の攻撃を受ける回数自体を減らすことができる。
そういう考えが、このスタイルの肝でもある。仮にボールロストしても、味方が素早い切り替えを徹底し、その場でボールを回収すれば大きな問題はない。