プロ野球亭日乗BACK NUMBER
大谷翔平の投手復帰は成功なのか。
2014年の田中将大から考える。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2018/09/03 19:00
88日ぶりに投手として復帰したが今季2敗目を喫してしまった大谷翔平。
すでに優勝争いから脱落してるが……。
この時期のマウンド復帰に論議があるのは確かだ。
すでにエンゼルスは、ポストシーズン進出の争いからはほぼ脱落している。
今季の残り試合よりも、来季に視線を移した戦いが求められる時期にあるのは確かなのだ。そんな時期、肘の故障で離脱した大谷にムリして投手での復帰をさせる必要があるのか?
「通常のオフを迎えるために、現状を知ることが必要だ」
周囲の不安の声に対し、こうビリー・エプラーGMが反論して実現した登板だった。
アクシデントはあったが、肘に関しては大きな問題はなくマウンドに立てた。そこは確かに収穫だったといえるのかもしれない。
ただちょっと気になるのは、過去に同じような過程で復帰をしたニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手が、翌年に再び肘のアクシデントに見舞われていることだ。
秋に復帰したが、翌春に再発。
メジャー1年目の2014年7月9日に右肘靱帯損傷で15日間の故障者リスト入りして、グレード2の損傷(部分断裂)で、PRP療法を選択というところは、今回の大谷とほぼ同じ経過だった。
その後、田中はシーズン終盤の9月21日にマウンド復帰し、最終的には2試合に登板。その時点で患部に異常はなく、とりあえずは完治という診断だった。
ところが問題は翌年だった。
開幕はメジャーで迎えたが、4月23日の登板後にひじの不調を訴えて、再び約1カ月間の戦線離脱を余儀なくされている。
9月の復帰が直接的に翌年の“再発”の原因だったのかは分からない。ただ、ある医療関係者から取材でこんな話を聞いたことがある。
「肘の故障は復帰後のリハビリが最大のポイント。トミー・ジョン手術でもPRP療法でもリハビリを最後まできちっとやり切れるかどうかで、再発の危険性が飛躍的に下がるかが決まる」