太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
各競技団体に問題が噴出する中で、
フェンシングと太田雄貴が誓うこと。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph bySports Graphic Number
posted2018/09/09 11:00
東京グローブ座での日本選手権のリハーサルの模様。本番に向けて、準備が着々と進んでいる。
アジア大会で女子金メダルの快挙。
さて9月初旬に、アジア大会が閉幕しました。
その1カ月ほど前、7月の世界選手権で日本勢はメダルゼロと苦戦を強いられました。これは「2020年の2年前」ということで各国が強気に出てくる中、昨年好成績を残した日本の選手たちは東京五輪出場に向けてのポイント加算面で少し受け身に回ってしまったのが原因の1つにある、と感じています。
アジア大会にしても、韓国は以前から国を挙げて強化を進めていますし、中国も2008年の北京五輪を契機に力をいれている。決して楽に勝てるわけではありません。
それでも、アジアでは絶対に勝たなければならない、という状況の中で、男子エペ団体と女子フルーレ団体が、ともにアジア大会史上初の金メダルを獲得することができました。
この2種目については、実は「上に行けるとしたらこの2つだな」と思っていた種目でした。なぜなら、この2チームについては、選手それぞれのコンディションはもちろん、チームとして、勝てる雰囲気、ムードを持っていたからです。
宮脇花綸の半端じゃない献身。
具体的に言えば、女子フルーレは菊池小巻、東晟良(あずま・せら)、辻すみれがそれぞれに力をつけてきていて、またフランスから招聘したフランク・ボアダンコーチの指導力も見逃せないのですが、実は団体戦においては宮脇花綸(かりん)のリーダーシップがすごく大きかったと考えています。
彼女のチームに対する献身はほんとうに半端じゃない。今回はたまたま彼女がチームの中で最年長でしたが、たとえ彼女より年上の選手がチームにいたとしても、宮脇をキャプテンに据えることでチームとしてうまくいく、と思うくらいの素晴らしいリーダーシップでチームを引っ張ってくれました。
それから男子エペについていえば、同種目個人で日本人初のW杯優勝を成し遂げている31歳・見延和靖の熟練したリーダーシップと、今大会同種目個人でも銅メダルをとった伸び盛りの20歳・加納虹輝の勢いのバランスが勝利を引き寄せたと思っています。よい形でケミストリーが生まれていました。