太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
各競技団体に問題が噴出する中で、
フェンシングと太田雄貴が誓うこと。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph bySports Graphic Number
posted2018/09/09 11:00
東京グローブ座での日本選手権のリハーサルの模様。本番に向けて、準備が着々と進んでいる。
体育会系は本来、実力主義のはず。
実は「体育会系」の根幹をなす思想は、決して「タテ社会」的なものではないのです。本来の「体育会系」は究極の「実力主義」であり「競争主義」です。あくまでもフェアなフィールドで争い、勝負に勝てば試合に出場でき、日本代表にも選出される。
いずれも当たり前のことです。でも、その当たり前の選手選考、さらにいえば勝敗を決する判定の場面で、その原理原則を履き違えてしまった事象が続いているのが、不祥事の大きな原因になっていると思います。
一方、選手・コーチ間のコミュニケーションでの「暴力」は、最適解を見つけるのはとても難しい、と感じています。暴力はもちろん許されることではありません。ただ周りとしては“暴力行為”に見えても、当事者同士の信頼関係の中でそう捉えていない、というケースもあります。
この場面で大切なのは、どちらが正しいかを判断することではなく、とにかく対応のプロセスを迅速に、オープンに提示していくこと。意思決定者が逃げも隠れもせず、当事者に丁寧に意見聞き取りをした上で、そのプロセスも含めてオープンに、誠実に対応するのが大事なのだと思います。問題が大きくなってメディアの追及を受けるのは、事後対応のまずさが大きな原因になっています。
つまり情報開示の面でもフェアであることが求められているのです。
フェンシング協会会長としての責任。
フェア、という意味では、協会のトップと選手の関係もまたフェアでなければなりません。
私は協会長という立場ですが、選手は私を遠慮なくイジってきますし、私も選手とは冗談を交えて、フラットにコミュニケーションをとっています。
「それは太田くんが若いからだよ」と言われることもあります。そういった要素もあるかもしれませんが、私はどれだけ年をとっても、立場がどう変わっても、選手たちとは同じ姿勢で関わりたいですし、どんなに時が経ってもそういった姿勢でいられる人がトップに立って団体を動かしていくべきだと思います。
いずれにしても私は今、日本フェンシング協会の会長として、もし選手や関係者の不祥事が起きてしまったら、全ての責任をとらなければならない立場にいます。
そのようなことのないよう、全国すみずみ、地方のフェンサーひとりひとりに、私の思いや考えを届けていく努力を続けなければならない、と感じています。