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五輪ボランティアは何が問題か。
応募者の性質と、対価の重要性。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph bySports Graphic Number
posted2018/08/25 11:30
ボランティアを募集する東京2020組織委員会のホームページ。人々が自発的に参加したいと思える環境づくりが必要だ。
リオ、平昌では離脱した人々も。
2012年のロンドン五輪&パラリンピックは「ボランティアによるオリンピック」と言われた。24万人がボランティアに応募し、8万6000人が面接を受け、最終的に7万人もの人たちが貴重な時間とスキルを提供してくれている。
前述したティムさんのように、自身の持つ経験やスキルをボランティアとして捧げたいというイギリス人が多かったのかもしれない。しかし大会運営に絶対に必要なスキルを持つ人材まで無給ボランティアで賄うのは「やりがい搾取」のような気がしてならない。
リオ、平昌大会ではかなりの数のボランティアが大会期間中に離脱したというニュースが出ていた。東京大会と同様、日当も交通費も宿泊費も出ない。拘束時間も長く、肉体的にきつい仕事も多いため、辞めたいと思う人が出るのも当然だと思う。一方で責任感から職務を全うした人たちにそのしわ寄せがあったことは明らかだ。
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ボランティアのユニフォームや靴、数枚のチケットを報酬代わりに受け取れるとは言え、宿泊費や交通費は自前というのは若い学生には厳しい。
地方の小さな大会で予算が限られていたり、地元開催の大会の助けになりたいと自主的に行う場合ももちろんあるが、IOCやJOC、東京2020の組織委員会などには財政的に困っている様子はない。役員たちの高級ホテルの宿泊費、接待費、パーティ代などからボランティアへの経費は捻出できるのではないだろうか。
アジア大会では1万5000人に日当が。
現在インドネシア・ジャカルタで開催中のアジア大会では、1万5000人のボランティアに日当が支払われているという。今大会は当初、ベトナムのハノイが開催地として決まっていたが、2014年4月にベトナム政府が財政的な問題を理由に辞退。その後、ジャカルタに決まったという経緯がある。
限られた時間の中で、ボランティアに日当を支払えるほどのスポンサーを集めたのは賞賛に値する。有給ボランティアの意識、姿勢などがどう変わったのか、など興味深い点は多々ある。
インドネシアができたことを他国ができない理由は見当たらない。「無給ボランティアに依存する大会作り」の流れを断ち切ることが、スポーツのメガイベントの持続性に結びつくように感じている。