Overseas ReportBACK NUMBER
五輪ボランティアは何が問題か。
応募者の性質と、対価の重要性。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph bySports Graphic Number
posted2018/08/25 11:30
ボランティアを募集する東京2020組織委員会のホームページ。人々が自発的に参加したいと思える環境づくりが必要だ。
ボランティアは就職に有利か?
先日、スポーツ庁と文部科学省が、全国の大学や高等専門学校に五輪とパラリンピック期間中の休校を呼びかけた、というニュースが出ていた。そもそも五輪&パラリンピックのためにそういった措置を半ば強制するのはいかがなものだろう。
スポーツに興味がない人もいるだろうし、しっかり勉強したいと思っている学生も多いはずだ。2008年北京大会の際は、多くの大学が会場に指定された関係もあり、多くの大学が大会期間は休みになった。学生たちは「学徒動員」的な感じでボランティアをしていたが、東京2020も同じような状況を目指しているのだろうか。
ボランティアをすると就職に有利になるのでは、という意見も出ていたが、果たしてそうなのだろうか。
現場は日本語、無給で長時間……。
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リオ五輪の際に、ボランティアのために中国から来ている中国人学生たちとランチをする機会があった。大学がグローバルな人材育成を目指しており、リオまでの渡航費や滞在費を補助してくれたと話していた。
海外で母国語以外の言葉を使って仕事をする経験はなかなか得られるものではなく、彼女たちのような場合、就職活動でも有利になるかもしれない。
しかし日本で行われる大会の場合、現場ではおそらくほとんどの会話が日本語で行われるため、上記の例には当てはまらないように感じる。
また就職活動の際に、ボランティア経験のある学生の姿勢を都合よく解釈する企業もあるのではという懸念もある。やりがいのある仕事なら無給でも長時間働くことを厭わない、と考える企業がないとも言えない。
スポーツビジネスに関わりたい学生、サークルのノリで思い出作りの一環で参加するのはアリだと思うが、宿泊費や交通費などの経費を自腹で払ってまで行う価値があるかは疑問符がつく。