Overseas ReportBACK NUMBER
五輪ボランティアは何が問題か。
応募者の性質と、対価の重要性。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph bySports Graphic Number
posted2018/08/25 11:30
ボランティアを募集する東京2020組織委員会のホームページ。人々が自発的に参加したいと思える環境づくりが必要だ。
優れた人材は有給で雇っては?
ボランティアをする理由に「なるほど」と思ったけれど、有給休暇を使って10日間近く働くのはなかなかできることではない。イギリスの郊外に住んでおり、大会期間中はロンドンの友人宅にお世話になっていると話していた。
ティムさんは「ロンドン五輪の時も同じ仕事をしていた」という理由でプレスルームで記録やプレスリリースのファイリング、情報の貼り出しなどを担当していた。仕事の速さ、正確さは素晴らしく、また若いボランティアのリーダー的な役割も担っていた。彼のような人材は無給ボランティアではなく有給で雇うべきではと感じた。
「職場仲間」という意識改革を。
日本の大会でボランティアをした経験がある。
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報道陣の対応を担当したのだが、選手のインタビューを思うようにとれないと、ボランティアスタッフを呼びつけて怒鳴りつける記者もいた。一緒に働いていたボランティアの方々は地元の高校の陸上部の顧問の先生たちで、慣れない仕事を懸命に行っていたにもかかわらず、だ。
報道に関わる人たちは、国内外にかかわらず多くの大会を経験している。しかし日本でインターハイや国体の開催は(場合によっては異なるが)そうそう巡ってこない。地方大会でのボランティア経験はあっても、全国大会や世界大会に関わったことのある人は少ない。
その辺りを考慮せずに、自分たちの要求を頑なに通そうとする報道陣にはちょっと驚きを感じた。
筆者自身も過去に言葉が通じずイライラしたことはある。態度が悪かったことも過去にはあると思う。しかしボランティアなしでは大会は成り立たない、仕事がスムーズに進まない。ボランティアは同じ空間と時間を共有する「仕事仲間」であり「同僚」だ。
報道陣だけではなく、選手や関係者のボランティアスタッフへの認識を変える必要もあるだろう。