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「栄さんの時は逃げなかったのに」
女子レスリング、アジア大会の裏側。 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byKoji Fuse

posted2018/08/27 17:00

「栄さんの時は逃げなかったのに」女子レスリング、アジア大会の裏側。<Number Web> photograph by Koji Fuse

昨年の63kg級世界王者オーコン・プレブドルジ(モンゴル)に負けた直後の川井梨紗子。

日本人選手は急にタックルが下手に!?

 いったい何が原因なのか。

 女子強化委員長である笹山秀雄氏は川井を引き合いに出し、うまくてきれいなレスリングに走りすぎたと推測する。

「今大会に向け、川井選手は組み手重視でやってきたけど、(いざ試合となったら)タックルに入れるだろうというところで入っていない。以前だったら、試合が始まってすぐタックルに入るような感じでしたからね。川井選手にはリオなど過去の自分の試合映像を見て確認するように伝えました」

 川井だけではない。

 筆者は会場で見ていたが、日本選手はタックルに入りきれないケースが多かったように思う。対照的に弾丸タックルを決めていたのは躍進が目立った北朝鮮だった。

 組み手のうまさは微塵も感じられなかったが、正面から力強くドーンと入る剛速球のようなタックルを武器に2階級を制した。

 指導しているのは、モントリオール五輪52kg級の金メダリストで現在は日本レスリング協会の専務理事を務める高田裕司氏のライバルだった人物といわれている。

強いタックルは日本の象徴だった。

 かつてタックルは日本レスリングの強さの象徴だった。

 それは男子だけではなく、女子にもいえることだろう。西口氏は油断があったといわざるをえないと唇を噛んだ。

「今までの女子は強いタックルに入って、日本の女子は強いんだ。付け入るスキはないんだという感じだったけど、少しもろさが出てきたのかもしれない」

【次ページ】 以前は最後まで攻めていた選手が守りに!?

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