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「栄さんの時は逃げなかったのに」
女子レスリング、アジア大会の裏側。
posted2018/08/27 17:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Koji Fuse
8月20日と21日(現地時間)の2日間、インドネシアの首都ジャカルタで開催されていたアジア大会で異変が起こった。
金メダルを量産すると期待されていた日本の女子レスリングが金ゼロという散々な結果に終わってしまったのだ。
4年に一度のアジアのスポーツの祭典として行われるアジア大会で女子レスリングが採用された'02年の韓国・釜山大会からだが、5大会目で連続獲得記録は途絶えてしまった。今回のメンバーの中では唯一オリンピックの金メダリストとして出場した62kg級の川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)も、準決勝で昨年の63kg級世界王者オーコン・プレブドルジ(モンゴル)にフォール負け。
試合終了直後、ミックスゾーンに現れた川井は目を真っ赤に腫らしていた。
プレブドルジは、かつて伊調馨に勝ったこともある日本人キラーだ。「相手のパワーが強いことも、投げ技が得意なこともわかっていた。一瞬のスキというか、6分間の中で1秒でも気がそれてしまった自分がいけなかった」
銀2個、銅3個という厳しい結果。
昨年12月の全日本選手権では女子フリースタイル48kg級世界王者の須崎優衣(現・早稲田大)を撃破。今年6月の全日本選抜選手権ではリオの金メダリストである登坂絵莉も破っている50kg級の入江ゆき(自衛隊体育学校)は決勝まで進出したが、ビネシュ・フォガト(インド)にニアフォールに持ち込まれるなど押されまくった末に2-6で敗れた。
「(決勝では)私のスタイルができないように攻められた」(入江)
トータルして銀2・銅3という結果に、男女を合わせた強化の最高責任者である西口茂樹強化本部長は、「非常に厳しい結果」と肩を落とした。
「僕らの考えが甘かった。『たぶん勝てるだろう』というつもりで来たら、勝てないことがよくわかりました」